【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第4章 愛なんて知らなくて
【咲夜】
彼岸様・・・
ううん、紫雨様・・・・。
結果から言えば"最悪の事態"が的中したって訳で。
昔、まだ彼岸様と知り合って間もない頃。
紫雨様は何度もこうして暴れた。
村一つ潰すまで止められなかったこともある。
「紫雨、さま・・・」
酷く憎しみを含む紫雨様の声に
私は顔を歪めることしかできない。
元々彼岸様だってひどく短気で
咲夜とよく喧嘩しては屋敷を半壊させたものだ。
でも紫雨様はそんなのとは比べ物にならないのだ。
やはり神なんだと、いやでも思い知るほどに。
彼岸様がどれだけ手加減してくれていたのか
痛いほど身に染みるのだ。
「あ、ごっめんねぇ咲夜ちゃん!
人間ちゃんがあんまりにも可愛くって!
みんな平等に構ってあげないとかわいそうよね?」
ノギの顔を覗き込んで髪に隠れて見えなかった顔は
今度はこちらに向けられ、元の無邪気な笑顔に戻った。
「そんじゃぁちょっと
"姉様"と遊ぼっか?」
そう言いながら掲げられた右手を中心に集まるように
満月が見えていた夜空は分厚い雲に覆われた。