第1章 ギャンブル
「まだ?紗英ヌナ、いつ休ませるのさ」
あれから二時間近く、夏音は少し休んではリクエストや自作の練習をしている。
「待てないなら帰れば?」
グラスを磨きながらヌナは気のない風に言う。
心配じゃないのか、昼間にあんなにダンス練習して夜中にこんなにもバンドの練習なんて。
「それが作戦?」
まさか、俺が帰るまでヌナが邪魔してるとか?
「なわけないだろ。あの子が練習したいって言うんだからさせてやりなさいよ。仮にもご主人様なんでしょ?社長は文句言わず待ってるわよ。」
社長の名前が出ると相変わらずイラついた。そう、夏音のご主人様は俺だけではない。
3曲ほど歌って夏音がまたカウンターに引き上げてきた。他のメンバーも一緒にヌナがさっき、俺の説明を体裁のいいようにメンバーに説明したからメンバーはなんの疑いもなく、カウンターに寄ってくる。さっきみたいに個人練習してればいいのに。俺が、夏音と話せないだろ?
「いつ、休むんだ?」
「休み、あると思う?」
夏音は皮肉を言って笑う。
そうだろうな。社長の相手に俺も加われば、休むなんて無理な話になる。
『plplplpl~♪』
「はい、社長?え?今日は…実は…ジヨンにバレまして…ん、そう、そうです。…すみません…」
話の内容が分る会話だ。察しのいい社長のことだ。俺の行動もお見通しだろうな。
「は、はい。ちゃんとリハには間に合うように帰らせます。じゃ…」
「ごめん、みんな、先に上がるね。ジヨン、行こう。」
社長に言われてやっと部屋に戻る気になったのか。
「あぁ、じゃぁ、みんな、明日のリハで。」