第17章 雪解けのように
「・・・た、だいま」
未だになれない
ここへ『帰ってくる』という感覚があまりない
結衣「あら、お帰りなさい」
パタパタと小走りで叔母が出迎えた
カ「お、お邪魔します」
結衣「いらっしゃい、どうぞ。蓮さんは奥ですよ」
「分かりました・・・行くぞ」
緊張する
廊下を進み、叔父がいるであろう部屋の襖を開けた
「失礼します」
先に叔母が叔父の隣に座った
テーブルを挟んで、叔父に向き合う
彼の視線はカラ松へと向けられた
「彼のことは後で俺から話します。何の用ですか」
腕組みをしたままこちらをみた
蓮「君の母親が市役所で君の所在を聞いてきたらしい、今日電話があった」
嘘だろ、今更探してるなんて
蓮「一応教えずに帰ってもらったようだが、どうする?」
どうもこうも会う必要なんかない
母親だと思ってもいない人なんかに
動揺が広がり、膝の上で握っている手が震える
その手にカラ松の手が重ねられた
カラ松を見れば、なぜか泣きそうだった
そうだ、一人じゃない
顔が綻ぶのが自分で分かった
結衣「あら、まぁ」
なにやら声を上げた叔母を無視する形になるが、仕方ない
真っ直ぐ叔父を見据えた
「今、は・・・俺には会う勇気も、覚悟もありません」
蓮「そうか、なら市役所には教えないよう言っておこう。早い方がいいからな、少し待っていてくれ」
そう言って部屋を出ていく叔父
そうかからずに戻ってきた
蓮「さて、それで」
いよいよ本題とでも言うように叔父は机の上で手を組んだ
「彼は俺の大事な人です」
2人とも反応はない
「もし拒否をされるなら俺はもうここへは来ません。はっきりと聞かせてください」
はぁ、と溜息を吐かれる
蓮「君は、何か勘違いしていないか」
「え・・・」
意味が分からず叔父を見遣ると、哀しげな瞳をしていた・・・