第6章 ハプニング
十四松の声が聞こえると同時にデジャビュが襲う
ぐらりと揺らぐの体
チュッ
聞こえるか聞こえないか、微かなリップ音
一瞬のはずなのにスローモーションのような感覚
ドサッと固い床に倒れこんだ
「いってぇ・・・背中に突っ込んでくんなよ」
十「ごめんなさい・・・だいじょぶっすか?!」
俺の後頭部と腰から手を抜き、が上半身を起こす
咄嗟に庇ってくれたようだ
「・・・前にもこんなんあったな。つか大丈夫か?」
問われるが声が出ない
前のことを思い出したのもあるが、さっき唇当たったよな?!
事故とはいえキスしてしまった
どうしよう、嬉しいやら恥ずかしいやら逃げ出したいやら色んな感情がグルグルする
先生「おーい、松野~」
「呼ばれてる」
いつの間にか起き上がっていたが手を差し出していた
カ「あぁ、すまん」
手を取り、慌てて立ち上がる
自分の顔が赤いのが分かる。それを見られたくなくて、すぐに踵を返して走り出す
が、足が縺れて転んでしまった
「何やってんだよ」
後ろから腕を掴まれ引き起こされた
カ「うぅ、すまん」
「んじゃな、気ぃつけろよ」
何事もなかったかのようにスタスタと歩いていく
自分だけが意識いているのをまざまざと見せつけられているようで悲しくなった
歩いていく彼の背中を見送るしかできないんだ・・・