第29章 終章 口ずさむのは
side.
麗らかな春
3年に進級するも、さして変わらない日常
柔らかな日差しに誘われて、屋上に出た
「ふわぁ・・・ねむ」
春眠暁を覚えず
何をしてても眠気が付きまとう
フェンスを背凭れに座り込み、目を閉じた
カ「やっぱりここか」
薄く目を開けると、逆光を携えたカラ松
後光みたいだな
当然のように隣に座る
カ「出逢った時みたいだな」
「・・・そうだな」
カ「眠いのか?」
「ん」
カラ松の肩に頭を乗せる
目を開けているのも億劫だ
カ「もう1年経つんだな」
そうだっけ
2年の春先に、ここで初めて会ったんだな
「あん時はほんとに面倒で、鬱陶しかったのに」
カ「・・・そんなにか?」
「あぁ、人の話聞かないし、しつこいし」
また、ふわぁと欠伸が出る
カ「仕方ないだろう、の歌声が気になって仕方なかったんだ・・・気が付いたら自身も気になってた」
「でもこれだけ好きになれるってさ、きっと出会うのも必然だったんだろうな」
頭を上げ、カラ松の方を向く
「これからも、俺に歌わせて。カラ松を愛したい」
君がいれば
「カラ松だけに歌うから」
カラ松の手を取り、甲に口付ける
「こんな俺をこれからも、愛してくれる・・・?」
そう言うと、微笑むカラ松
カ「もちろん。俺があ、愛、したいのはだけだ」
照れているのも可愛い
カラ松の顎に手を添え、ゆっくりと近付く
そっと合わさる唇
君が教えてくれた、愛を唄うために
愛しい君が隣にいて欲しいから
今も、これからも
俺が口ずさむのは
君と育む、愛だから―――――
-fin-