第22章 チョコレート・パニック
休み時間の度に廊下に呼び出され、受け取ってくれと言われる
マジでなんなんだ、俺なんかしたか?
カラ松のことがあるからなるべく受け取らないようにしてはいるが、中にはしつこいのもいる
食う気ないっつっても、それでもいいから受け取ってほしいって・・・意味あるのか?
気付けば紙袋2つ分だ
同じクラスの奴が袋をくれたのは助かった
そもそもこういうの持ってくるのって禁止じゃないのか?
この学校ユルいんかな
いいや、4限目サボろう
そのまま屋上にいれば何とか逃げれるだろう
「流石にちょっとさみぃな」
屋上に出て貯水槽の梯子を上り、隣のコンクリートに飛び移る
淵から真下を見下ろせば屋上の扉
「ここなら大丈夫だな」
少し硬いが横になろうかと思った瞬間、扉がバンッと開けられた
そっと覗くとそこには
「カラ松?」
呼べばクルリと振り向く
しかしその顔は、いつもキリッとしている眉をさらに吊り上げ、眉間が寄っている
ジトッと睨まれた
カ「どうやってそこ登るんだ」
自分が登った経緯を説明すると、同じように登ってくる
目の前で仁王立ちをしたと思った瞬間、抱き締められた
「っと、どうした?」
カ「教室にいると『最近松野君て君とよく一緒にいるよね、渡してくれない?』って。嫌だって言いたいけど、言えないから・・・」
はぁ、と溜息をつきカラ松を抱き締め返す
「悪い、嫌な思いさせて」
カ「は悪くない。勝手に俺がイラついているだけだ」
「なんでいきなりこんなんなったんだろうな」
皆目見当もつかない
カラ松にこんな思いさせるなんて・・・
カ「この間の文化祭が原因みたいだぞ」
頼んできた1人に聞いたところによると、執事姿がすこぶる好評な上、無愛想をクールと捉えられたらしい
好きって子もいるが、カッコいいから渡したい、アイドルなんかに渡すのと同じ感覚だと
「それだけかよ・・・女って分かんないな」
だが、1つ分かった
完全に見た目、しかも所謂コスプレ姿
そんなもので好きだのカッコいいだの言われても嬉しくもなんともない
そんな表面的なもので関係が始まったとしても、すぐに壊れるだろう
イメージと違うとか、価値観が違ったとか
「やっぱりイベント事って面倒だな」
吐き捨てた独り言は終業のベルに掻き消された