第4章 来客
サーシャの手を解き、ルシファムとリアムの間にある椅子に腰掛けた。
「なあ、さやか。お前、俺の城に来ねえか?」
ゼラのあまりに突拍子のない言葉に一瞬固まるが、瞬時に嫌だ、と睨む。その睨みに効果が無いことは十分すぎるくらいに分かっていた。リアムが、ダメだとばかりに私の手を握る。ルシファムはなぜか俯いている。
「来いって言ってんだよ。いいよなぁ、ルシファム?」
ダメって言って!と念力を送るが、それも届かず、ルシファムは俯いたまま歯を食いしばる。
「行け、さやか」
それは耳を疑う言葉だった。
「なんで!?私は────」
「行けって言ってるんだ!」
目の前に並ぶ美味しそうな料理。
そんなものにも私は目も向けず、自室まで逃げるようにして走った。
「さやか様っ!」
後ろから私を呼ぶ声がした気がした。
+-+-+-+-+-+-+
【食堂】
「ルシファム様っ!どういうおつもりですか!?」
めずらしくも感情をあらわにして怒鳴るミアーシェ。だが、ルシファムはミアーシェを見ることもなく、俯き続ける。
「兄様………っ、どうしてあんなこと言ったのっ」
二人に責められてもルシファムはびくともしない。それを見てにやりとほくそ笑むゼラとサーシャ。
「お前なら断れねえと思ってたよ」
「へぇ、兄さんったら計算済みだったんだー?」
どれだけミアーシェとリアムが彼らを睨もうが、何も変わらない。そんなこと、本人達が一番分かっていた。それでも、この行き場のない思いをどこにぶつければいいのか分からないのだ。
「くそっ…………!」
誰かがそう呟いた。