第1章 魔界
でも、さっきまであんなことしてたんだし、いいんじゃないの?
って、え?
「ふぁああああああ!?ごめん、ほんっとにごめん!!!」
私はなんてことを!
例え、あの時正気ではなかったとはいえ………。
私は急いでドレスを着直した。
「王女様、申し訳ありません!」
ミアーシェが勢いよく後ろを向き、私に頭を下げた。顔は見えないが、耳まで真っ赤だ。
「顔、上げて?」
ミアーシェが少し戸惑った様にして、顔を上げる。私は少しでも彼を安心させたくて、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「今のは私達だけの秘密ってことで、ね?」
私の言葉に、ミアーシェが更に顔を赤らめた。何故だろうか。私の中の蓋か何かが開いてしまったのだろうか。あんなことしたのに、ミアーシェと普通に話せるし、しかも、またしたいと思ってる。こんなの、普通じゃない。
「王女様………!ありがとうございますっ」
こんなに感情をあらわにするミアーシェは初めてだ。彼との距離も狭まった気がする。
「それより、ミアーシェ………その、苦しくない?」
私は、それ、とミアーシェのモノを指さしながら尋ねた。結局、私だけ気持ちよくなってしまい、ミアーシェはおあずけ状態なのだから。
「わ、私のことはお気になさらずに!とにかく、お部屋に急ぎましょう!そろそろお時間になってしまいます!」
早口にそう言い、ミアーシェは私の手を取って、部屋へと向かった。
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さっきの行為で汗をかいてしまったので、お風呂に入る。もちろん、ミアーシェも一緒に。
不思議と、昨日のような躊躇いも恥ずかしさもない。
「あっ………ねえ、そういえば、さっきなんで私の鎖骨にキスしたの?」
不意にこんなことを聞いたからか、私の頭を洗っているミアーシェの指が少し止まった。
「あっ、あれは………、私に心が読まれるのが嫌に思われていたので、私の魔力を注ぎました。左の鎖骨あたりに私の魔力を注ぐと、私の能力は効かなくなるのです」
「ふぅん」
私は頷き返しながら、そっと鎖骨に眼を向けた。そこには、しっかりと結界が描かれてある。青い文字。手に刻まれたのとは違って、星とかはない。
「ありがと」
私がお礼を言うと、後ろでミアーシェが小さく笑う声が聞こえた。
「どういたしまして」