第9章 君の名を呼ぶ紅と虹 【R18】
「そうだ、めいさん、これを渡そうと思ってたんだ」
懐から包み紙を出し中のものを取り出すと、椿の装飾が施された髪飾りが出てきた
「凄く綺麗…繊細な作りで色も深くて素敵…」
(細かいところまで綺麗に再現されてる。とても器用な人が作ったんだろうなぁ)
「喜んで貰えて良かった」
「で、でも、いいの!?こんな素敵な髪飾り、露店出だしたら、女の子絶対喜ぶと思うのに…」
(意中の人に貰ったり、おしゃれして振り向いて貰いたいって女のコ、個の時代にだっていると思うのに…)
戸惑うめいに佐助は静かな口調で告げる
「君の言葉が嬉しかったんだ、だからこれは君に使ってもらいたい」
「え?」
吸い込まれそうな強い眼差しを向けられ、その瞳から目が離せない
「俺が居るから、この戦国の世でも怖くないって」
「う、うん…佐助君がいてくれるから、とても心強いよ」
ここにタイムスリップしたから、佐助と出会えた。いつ命を落とすか分からないこの時代、心の支えとなり、いつしか恋心だと自覚し今に至る
「それに君はさっき…俺の事が好きだと言ってくれた」
「っ…」
(あれ、夢の中で呟いた事じゃなくて口に出してたの!?)
「めいさん…」
優しくて、艶めいた声が耳にこだまする。心做しか柔らかな笑みを浮かべる顔から目が離せない
「佐助君の事…優しくて、強くて凄く大きな存在になってた…だから側で支えたいって思ったの…」
(だめ、泣いてたら…いけないのに…そんなつもりじゃないのに…)
涙が一筋零れ落ち頬を伝うと優しく涙を拭われた
「泣かないで。君がそんな風に思ってくれたたなんて」
「ごめん…なんで泣いてるんだろ。可笑しいよね…すぐ止めるからっ…」
袖を摘み涙を拭おうとしたその時、優しく胸の中に包み込まれた
「さ、佐助…く…ん?」
(ど、どうして…!?)
「ごめん、俺は感情を面に出す事が不得意だから、何を考えてるのかよく分からないっていつも言われてきた」
頭を撫でる手つきは少しぎこちないけれど、優しく包み込むように労る心が滲み出ている
「今まで、何かがもやもやしていたんだ。でも、分からなかった。気がついたら君の事を思い浮かべてた。」
「え?」
顔を上げると佐助の眼差しは強く光を宿していた