第9章 君の名を呼ぶ紅と虹 【R18】
めいは夢を見ていた。佐助の腕の中に包まれ、その温もりを感じ、互いに思いが通じあい、好きだと告げられる夢を
「好きだよ、佐助君、誰よりもずっと…ずっと…傍に居てね…」
「え…?」
気づけば頬をすり寄せ呟かれる寝言、顔にかかった髪をそっと耳の裏にかけると身じろぎ目を覚ます
(温かい…)
夢うつつの中、次第に夢から覚め目を開けると誰かの膝の上で眠っていた事に気づく
「…!!さ、佐助君っ!?」
真っ赤な顔で急いで体制を起こすが袖が絡まり、また倒れそうになる
「きゃっっーー!」
「おっと、大丈夫?」
逞しい腕に抱きとめられ、温かく引き締まった胸元に顔を寄せていた
(ゆ、夢と同じっー!!)
顔をあげると少し目元を赤くした佐助の視線と絡まり、慌てて体制を起こし離れる
「ご、ごめんね…勝手にお邪魔した上に…わ、私…」
「構わない。疲れていたんだろう、いいものが入ったから、ちょっと待ってて」
囲炉裏の前で作業する佐助の後ろ姿を見つめ、また顔を赤く染める
(だめだ…どきどきして…心臓持たないよ//)
先程の抱きしめらた甘い感覚がはなれない。佐助の気持ちが知りたいと思う反面、友達としてしか見てないと思う不安が入り交じり胸がずきんと痛む
(…だめだめ、この気持ちは胸にしまっておこう…)
自分に言い聞かせ、深く深呼吸すると、甘い香りが漂ってきた
「お待たせ。苦手じゃない?」
佐助が差し出しのは甘酒だった
「ううん、好きだよ!いい匂い…頂きます」
ほんのりと生姜の効いた甘酒は体の芯まで温めてくれる。甘さを抑えほんのりとしたお酒の香りが鼻を燻った
「温かい…昔、おばあちゃんがよく作ってくれてたの。懐かしい味」
「良かった。寒い時は俺も婆ちゃんがよく作ってくれてたんだ」
(佐助君の両親確か、共働きで忙しい人だって言ってたなぁ)
「そっか、佐助君の思い出の詰まった味だね、甘酒って」
「信玄様は喜んで飲むけど、謙信様は酒に砂糖など邪道だって斬りかかろうとするけどね」
「そんな事でーー!?」
(け、謙信様って…それを平然と話す佐助君…凄い師弟関係…)
驚くめいに佐助は表情ひとつ変えず言葉を紡ぐ
「日常茶飯事の事だし、それが謙信様なりの愛情表現なんだ」
微かに香る酒の味を噛み締め他愛ない話に花を咲かせた