第8章 雲掴む志と風 【R18】
「じゃーな、めい、家康」
「政宗、光秀さん、わざわざありがとう」
ひらひらと手を振り褥を後にする政宗と
「家康、たまには優しくしてやらないと愛想を尽かされるぞ」
と、小声で家康に告げる光秀
「余計なお世話です」
(あんた達に言われなくても俺は…)
感情を押し殺し不服そうな顔で見送る家康
嵐の後のように静まり返った部屋。めいは帰ってきた愛する男の姿を愛おしく見つめていた
「何?」
「あっ…その…お仕事終わったの??」
気まずそうに呟くめい
「これからまた隣国から届いた文に目を通して公務に戻るけど?」
「そ、そっか…無理しないでね」
「あんたは大人しく寝てなよ。本調子じゃないんだから」
そう告げて褥を後にした
本当はすぐにでも抱きしめたい、口付けたい、落ち着いて眠れるまでそばに居たい。色々な感情が渦巻くが、駿府城城主として、信長陣営の一員として、慌ただしい日々を送り、何より熱を出し、本調子ではないめいに無理はさせたくなかった
届いた文に目を通し、家臣に返事を書いた文を渡す。今朝、信長との領地についての話も一旦は話がまとまったが、煮詰めないといけない。公務に目処がついたのは日も沈みかけたた夕刻だった
自室へと戻り夕餉を取ることにする。めいと二人分の膳を女中が運んできた
「めい様も回復され、ご希望でお粥ではなく同じものに致しました」
「そう。分かった」
(政宗さんが作ってきたお焼きもぱくぱく食べてたし、食欲は戻ってるか)
「ほら、食べるよ」
「うん、いただきます」
二人して久々の夕餉を口にした
「美味しいー!お芋柔らかいね」
里芋を頬張りふにゃふにゃと笑う
(ほんと、呑気な顔。いつもと変わらない膳なのに)
「いつもと変わらないけど」
「ずっとお粥しか食べられなかったもん…」
「めいはほんと呑気だね」
そんな言い方しなくても!と頬を膨らます姿さえ愛おしく感じる
なんの気ない話をしながら夕餉を終え、少しすると家臣がやってきた
「家康様、失礼致します。取り急ぎお話が」
「分かった、すぐ行く」
家康は家臣と共に褥を後にした
明日の公務についての話を終え、自室に戻るとめいの姿が見当たらない