第8章 雲掴む志と風 【R18】
「おー、家康、丁度いい所に来たな。お前も食え」
(食えって。その前にめいから離れろ)
「家康!!おかえり!」
「相変わらず騒がしいですね。あんたも、寝てなよ」
素っ気ない言い方で見張るが、顔色も良くなっている事を確認した
政宗はお重に詰めてきたお焼きを皿に取り、家康に渡す
「ほら、これはお前のだ」
「ありがとうございます」
めいの横に座り政宗から少し遠ざけるようにした
「光秀さんは食べないんですか?」
めいは家康の心配も知らず光秀に声をかける
「俺は酒の方がいい。特に味もわからんしな」
「お前は何でも混ぜて食うからだろうが」
やれやれと言わんばかりの政宗
「腹に入れれば同じだろ」
政宗と光秀のやり取りを気にせずめいはお焼きを頬張った
「美味しい!!中のお菜っ葉の塩加減絶妙!」
ふにゃふにゃと笑いながらぱくぱくと頬張る
「だろ?葉物野菜は今、一番美味い時だ」
「いただきます」
家康は黙々とお焼きを食べ始めた
「すごい山椒の香りがする。家康、辛いもの好きだからよかったね」
不意に向けられた笑顔を可愛いと思う反面、誰にも見せたくない気持ちが交差する
(こんな顔、ほかの男に見せたくない)
「そーだね」
つい、素っ気ない言葉になってしまう
「ほら、めいまだあるぞ。遠慮なく食えよ?」
政宗は悪びれた様子もなくめいの口元にお焼きを持っていく
「だ、だから!自分で食べれます!!」
「遠慮するな。なんなら口移しで食わせてやろうか?」
容赦なく政宗の顔が近づく。無表情のまま家康は政宗の持っているお焼きを取り上げぱくりと齧った
「だから、人の御殿で口説くのやめてくれませんか?騒々しい」
(この人、わかってて口説こうとするからたちが悪い)
二人のやり取りを見ていた光秀は小声でめいに囁いた
「ふっ、家康が能天気な小娘に執着するとはな」
「ちょっっ!そ、そんな言い方!」
顔を真っ赤にし少し俯くと、家康が
「光秀さん、また訳の分からないこと吹き込んだでしょ?」
と、心底迷惑そうに呟く
「侵害だな。俺は本当の事を伝えただけだ。政宗そろそろ戻るぞ、油を売っていては秀吉の頭にカビがまた増える」