第7章 この瞳に和と洋 【R18】
スーパーマーケットに信玄は目を輝かせた
「これは野菜か?珍しいな」
手に取ったのはトマト。戦後の世にはないもの
「それはトマトと言う野菜です。ちょっと酸味があってみずみずしい野菜なんですよ。生でも食べますし、火を通して食べたりもします」
「とまとか、これはなんだ?」
「これはジャガイモと言います。芋ですが、甘みや粘り気のない芋ですね」
「ほぉ。こんな芋もあるのか、珍しいな」
(信玄様、楽しそう)
ほっこりした気持ちの中、野菜を選び、生肉コーナーへと向かう
「この時代は牛の肉を食べるのか。珍しい」
「癖もなく、牛、豚、鶏を主に食べますね。ウサギは食べないですよ」
「これはなんだ?」
「それは豆腐です。大豆をこして固めたものです」
好奇心旺盛な子供状態。カートを押す信玄とめいは傍目から見れば仲睦まじい新婚のようだった
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帰宅後、めいは料理に取り掛かる。性をつけてもらいたいとすき焼きを作ることにした
(口に合うかな…)
キッチンに立つめいを信玄は穏やかな顔で眺めている
(女が勝手場に立つ姿がこんなにいいものだとはな)
女中が料理を作り、膳を運んでくる。時折、覗く事はあったが、とりわけなんの感情も抱かなかった。愛おしい女が己のために食事を作る事など、めいと出会わなければこんな感情などなかったと、そう思ったのだ
めいは何かを持ってきた
「信玄様、火をつけますので、触らないで下さいね」
「なんだこれは?」
小さくて四角く、銀色の足が四つ。真ん中には空洞と奇妙な物がついている
「カセットコンロと言う、んー、小さな囲炉裏のようなものです。この上に鍋を置き、火をつけ、温めるんですよ」
「ほぉ。便利なものだな」
カセットコンロを置き、鍋置くと次第にぐつぐつと音を立て、食欲を掻き立てる匂いがしてきた
「さあ、食べましょう、お口に合えばいいのですが」
「あぁ、いい香りがするな、いただこう」
手を合わせすき焼きを食べることにする
「めい、卵を割ってどうするのだ?」
「生卵をつけて食べると味がまろやかになるんですよ。熱いものが苦手な方は少し冷えると言う利点もあります」
信玄はまず、そのまま口に運んでみた