第6章 白く淡い詩と唄 【R18】
織田家ゆかりの姫と謁見出来ると知り、大名は大層喜んだが、秀吉の心は不安ばかり募る。いつもより上品な柄の着物を姿はグッと色気を引き立てる
(いくら信長様の気に入りとしてもだ、俺以外…いや、俺と信長様以外に見せるのはなあ…)
「秀吉、どうかしたか」
「あ、いえ、何も。申し訳ありません」
(いかんいかん、)
「では続ける、三成、水の湧く地点は割り出せたのか?」
「はい、ここから北西へ一里超えれば水源がありますね、ここからこのように水路を設ければ…」
紙にさらさらと図面を書き上げる三成、
(こういうことは図抜けて頭の回転が早いよな、三成は)
めいも、三成の仕事ぶりに感心し、目を見開いている
「大儀であった三成」
「これで村の人々の暮らしが鷹になるならよかった…」
「そうだな、飢えで民を苦しめる理由にはいかないしな」
大名と共に水路を引く場所へとやってきた
何人もの民がこちらを駆け寄り、皆口々に信長へ言葉を述べる
「信長様、わざわざ起こし下さり有り難き幸せに存じます」
「心配はいらん、飢餓に苦しむ事はさせぬ、一刻も早い着手取り掛かる」
「有り難きお言葉…我々も力を尽くします」
(これも信長様の心遣いがあってだな)
深々と頭を下げる村民に手を振りその場をあとにした
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数日後、秀吉は慌ただしく政務に励んでいた。度々、現地へ赴き、信長と共に作業の指揮をとっている中々めいとの逢瀬も取れずの日々
(構ってやれないな、寂しい思いしてるだろうな)
城に戻るのは皆が寝静まった頃。信長の代わりに三成と視察へ出ることもある
いつも見るのはめいの寝顔のみ。早く甘やかしたい、抱きしめていたいその思いを胸に政務をこなしていた
数日経ったある日、作業も順調に進み家康がやってきた
「秀吉さん、ここからは俺が引き継ぎます。信長様も南蛮の商人との謁見があり、安土に戻りますから、一緒に帰って休んでください。状況は信長様から文を持ってるので把握してます」
「だが」
「あんたは、働きすぎですよ。信長様といい、そこまで酷使してどうすんですか?」
(家康に諭されるとはな)
「わかった。ありがとな、引き継ぎここを頼む。三成と仲良くやれよ」
無理です。と、小声で家康は呟いた