第6章 白く淡い詩と唄 【R18】
(ったく、家康のやつは無愛想にも程がある)
やれやれと眉間に皺を寄せると
「秀吉さん、冷めちゃうよ」
「ああ、そうだな、いただきます」
気を取り直し朝餉をとる。横では満面の笑みで朝餉をとるめい
(この顔、可愛いんだよな)
美味しそうに朝餉をとるめいと正反対に汁物、魚、香の物を全て飯碗にまとめる光秀、唐辛子をありとあらゆるものにかける家康
(またこいつらは)
秀吉の小言が響き渡る。いつもの見慣れた風景に上座で朝餉をとる信長は何も言うことは無い
「めい、急須とってくれるか」
「はーい、ちょっと待ってね」
前に置かれた急須を政宗に渡しそうとしたが
「めい様、私が取りますよ」
(まっ、まずい)
「三成、いい、俺がやる…」
ーーバシャーンーー
蓋が開き中身が三成の着物を濡らした
(遅かったか…)
「申し訳ありません」
「大丈夫!?三成くん!?火傷してない!?」
「はい、中のものは熱くはなかったようです」
急いで手ぬぐいを出し着物を拭き取るめいを見て
「やれやれ、めいに世話を焼かれるようでは世も末だな」
呆れ顔の光秀を横目に秀吉の世話焼き体質に拍車をかけた
「三成、あれほど手元を見るようにと口を酸っぱくして言っているだろうが。ここはいい、着替えてこい」
「はい、有難うございます」
(はぁーーなんで笑顔なんだよこいつは)
畳に飛び散ったお茶を拭き取り、秀吉は朝餉を済ませた
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明日は隣国の大名と謁見がある。水田の水が途切れがちで作物が育たず民が苦しんでいると言う
(一刻も早く解決しないとな、民を苦しめるわけにはいかんな)
信長はじめ、秀吉、三成、めいも同行することになった
「めいも連れていくのですか?」
「あぁ、あやつは幸運をもたらす女だ、験担ぎで連れていく」
「承知致しました」
(あいつを連れていくのか…)
浮かない顔の秀吉だが、気持ちを切り替え政務に励んだ
次の日、四人は通された広間で話をしていた
「この方が織田家ゆかりの姫様ですか、いやぁ美しい方で御座いますね」
まじまじと見つめる大名に秀吉共に顔がひきつる
「ありがとう…ございます」
(めいをじろじろと見るな)