第6章 白く淡い詩と唄 【R18】
「起きてたのか」
(我慢して起きてたんだな、無理するなって言ってるのに)
「だって、おやすみって言いたかったもん…」
「ありがとな、さぁ寝るぞ」
「うん!おやすみなさい」
「おやすみ、めい」
めいは秀吉の帰りを待ち、眠い目を擦って待っていた
(夜ふかしはダメだって言ってるが、俺を待っててくれたんだもんな)
頭を撫でていると、スースーと寝息が聞こえる。こめかみにやさしい口付けを落とし、秀吉も眠りについた
(んー、朝か)
今日は生憎の雨、外は小雨がパラパラと降っている。眠い目を擦りふと顔を上げるとめいはまだ眠りについている
(寝てる姿は童子だな、こいつ)
艶のある長い髪にそっと指を絡めるとサラリと指を滑る。その心地を秀吉は好んでいる
んんー、と身じろぎ薄らと目をあけた
(いかん、起こしてしまったな)
「んー、秀吉さん、おはよ」
「おはよ、起こしてしまったな」
「ううん、凄い心地いいから好き」
胸に顔をグリグリと押し付け甘えくる
(可愛いんだよなこの仕草)
優しく頭を撫でていると、ふと顔を上げ何かを強請るようにこちらを見つめる
(この顔はダメだろ、ったく)
そっと顔を寄せ、優しい口付けを落とす。柔らかな下唇を挟み啄むような口付けを落とした
(おはようの口付けか、いいもんだな)
ほっこりした気持ちの中、もう少しこうしていたい気持ちをグッと堪え支度をすることにした
「起きなきゃね」
「そうだな、お前も針子の仕事帰りあるもんな」
「うん」
名残惜しくも二人は起き上がり布団をたたみ、着物に着替える
めいは隣の部屋で支度を済ませ、顔を洗うため井戸へ向かった
「ほら、ちゃんと歯も磨くんだぞ」
「うん!朝餉なんだろう~お腹空いた~」
「しっかり食って仕事しないとな」
「えへへ」
強烈な生と死の匂いのする乱世の世に生きる秀吉にとって何気ないやりとりは何にも変え難い幸せに感じていた
仲良く広間へと向かう。今、どんな着物を仕立てているか、針子仲間に聞かれた仕立て方の事、たわいない話をしながら廊下を歩けば迷惑そうな顔をした家康と合流する
「あんた、ほんと朝から騒がしいね」
「こら、家康、無愛想に拍車をかけるな」
「はいはい。朝から仲いいですね」
棒読みで相槌を打つ家康