第5章 天仰ぎし恋と愛 【R18】
夕餉の刻を迎え広間へ赴く
朝と変わらない、秀吉の世話焼きの光景
(ほんと秀吉さんはお母さんみたい)
微笑ましく思いながら夕餉を終え、自室へと戻った
衣紋掛けに着物をかけ、寝支度を整える。障子を開けると満天の星空
(綺麗…手が届きそう)
女中から湯浴み支度が出来たと声がかかり、湯殿へと向った
湯浴みを終え部屋に入ると、窓辺に腰掛けまた星空を眺める
心地よい風が肌に触れとても気持ち良い。綺麗な満月も相まって行灯がなくてもほんのり明るくとても風情溢れた
本当は信長と見たかった。だが暫くは帰ってこない
(もう寝よう…)
久しぶりの自室、ここで一人寝起きしていた筈なのに…温もりも優しさもない褥
寝付くのに時間がかかってしまった
(んー、眩しい…)
目が覚めると改めて自室へ戻ってきた事を実感する
(今日は三成くんの着物を仕立てなきゃ…)
虚無感の取れないまま時は過ぎてゆく
二刻経った頃、秀吉より信長が夕刻戻ると知らせてきた
「良かったな、めい。信長様が戻られるぞ」
(戻ってくるだね…)
「うん」
いつもの様に喜ばない姿を見てめいの顔を覗き込んだ
「何かあったのか?」
驚き顔を上げると間近に秀吉の顔がある
「わぁーーっっ!!ち、違うの…帯を締めすぎてちょっと苦しくて…」
(だ、ダメだ全然頭が働かない…)
「本当か?」
「う、うん//結び方変えたら締まりすぎちゃった…えへへ」
俄に信じがたいと言わんばかりの顔をしているが、秀吉はそれ以上問い詰めなかった
「折角だ、門まで迎えに行くといい」
「うん、わざわざ知らせてくれてありがとう」
部屋を出た秀吉はぽつりと呟く
「なんかあったな。隠しきれないのがあいつらしい」
暫く様子を見ようと思い立ち去った
夕刻、信長は光秀と共に帰ってきた
いつもなら門の前で今か今かと辺りを見回すが姿はない
(めいは何故おらん?)
不思議に思っていると光秀が口を開いた
「信長様、めいの姿が見当たりませんね?具合でも悪いのでは?」
「具合が悪いと?」
門の前に立っていたのは秀吉だった
「おかえりなさいませ、信長様」
「あぁ、ところで秀吉、めいはどうしておる?」
「夕刻には戻る伝え、迎えに上がれと申しましたが…」