第5章 天仰ぎし恋と愛 【R18】
「あ?心配すんな、信長が居ない隙を突いて落城しようなんて思わねえーよ」
(え…?)
「心配ない。幸村ナイスボケ」
「は?何のことだよ?ないす何とかってなんだ?」
「幸村は優しいって事だ」
「なんか、丸め込まれた感じがすんげぇするが、まぁいい」
「そうだ、めいさん、そろそろ店終いするんだ。時間があるなら、茶屋へ行こう」
「うん!」
鮮やかな手つきで品物を風呂敷に包んだ佐助
(は、早い…)
「お待たせ。さぁ行こう」
三人は近くにある団子が評判の店へ向かった
「美味しーい!きな粉餅大好き!」
「草餅も美味いぞ、食うか?」
「うん!」
「食いすぎて肥えるなよ」
「ちょーー!酷いーー!!」
思わず叫んでしまった
「もぉー!幸村は女心分かってないんだから!」
「分かってないんだから」
真顔で輪唱する佐助
「佐助、気持ち悪いぞ」
二人のやりとりに思わずクスっと笑ってしまった
「ふふっ、本当にいい相棒だね、二人は。春日山は毎日、笑いが耐えそうにないって思っちゃった」
「そーか?世話の焼ける主君とすぐに斬り掛かる厄介な城主しかいねーぞ?」
「信玄様は幸村の事、凄く大事にしてるって思うし、謙信様はちょっと怖いけど、家臣思いだと思うよ。ちょっと大事にする方法が特殊だけど」
(二人が羨ましいなぁ…)
二人の姿を微笑ましく思っていると、おもむろに佐助が口を開く
「めいさん、いつでも春日山においで。皆歓迎してくれるよ」
「え?で、でも…」
「いーんじゃねーの?一人、女ったらしの世話の焼ける人がいるけどよ、お前みたいなイノシシ女を本気で口説かねーと思うし」
「ちょっとーー!ひ、酷い…」
プーっと頬を膨らますめい
「ごめんね、めいさん、幸村はデリカシーの欠片もないから」
「佐助、お前、意味わかんねえ言葉を使いすぎだろ」
「てへぺろ」
ぶつぶつ幸村は佐助に文句を言っているが
「まぁ、いつでも来いよ。お前は敵じゃねぇしな」
「二人ともありがとう」
少し気持ちが楽になり団子を食べ終えためいは二人と別れ城へ戻った
夕餉までの間、自室へ戻り縫いかけの着物を再び縫うことにした
(やっぱ針仕事は気持ちが落ち着くなぁ)
心無心にひと針ひと針丁寧に進めていった