第1章 不器用な花と蜜 【R18】
(あの時、秀吉さん、最後まで心配してたなぁ…)
「辛かったらいつでも言え、すぐに迎えをよこす。お前の帰る処はここ、安土城にあるんだぞ?」
優しくて、頼りがいのある兄貴肌の秀吉
懐かしさがこみ上げまた涙が頬を伝う
(皆、元気かな。昨日信長様に、元気で暮らしてると文を送ったところなのに…)
声を殺すも嗚咽する
(私…相応しくっ…な…い…の…?)
一方の幸村は城下を駆け回りめいを探していた
(あいつ、どこいったんだ?くそっ、見つからねぇ…)
焦る一方の幸村の目に佐助の姿が目に映る
「佐助ー! 」
「幸村?あれ?めいと城下へ行ったんじゃないのか?」
「それが…その…いなくなったんだ」
抜の悪そうな顔で口ごもる幸村
「また、めいさんを怒らせるような事でも言ったのか?」
顔色一つ変えず淡々と告げる佐助
「ちげぇよ…」
「へぇー。じゃ、女の人にでも囲まれたのか?」
ギクっ//
観念したかのように幸村はことの経緯を佐助に話した。
「あぁ、下世話な女達に囲まれてあしらったが遅かった」
「ったく、迷子になるくせに勝手に飛び出して」
「幸村はって本当、女心わかってないな」
「お前に言われたくない。お前はわかるのかよ」
売り言葉に買い言葉が二人の間で始まった
「ここで幸村と言い合いしている場合じゃない、恐らくその場から離れたくなるような、酷い事を言われたんじゃないか?彼女はまだこの地に慣れてない、そう遠くには行ってないはずだ」
「お、おう」
(どこだ)
そこに何も知らない信玄がフラリとやってくる
「幸村何をしているのだ?天女は城へと入っていったぞ?なぜお前はひとりでここにいる?」
(は?)
「信玄様、めい見たんですか?」
「ああ、遠目だったがあの姿は間違えなく天女だ。それより、なぜここにいるのだ?なぁ、佐助?」
「幸村が鈍いからここに居るんですよ、信玄様」
「おい、佐助!って、信玄様、感謝します」
慌てて幸村は城へと走っていった
(城なら無事だな)
「やれやれ、俺の家臣はまた天女を泣かしたのか」
出来の悪い息子に肩を落とすような信玄
顔色ひとつ変えない佐助
「今度、めいさんを泣かせたら十文字槍に落書きしよう」
ポツリと佐助は呟いた