第3章 白銀の陰と陽 【R18】
安土城下は活気に溢れ、皆、他愛ない話に華を咲かせていた
「朝、秀吉様からの文が届いたわー!」
「私もー//秀吉様って本当にお優しわ♡」
「こぉら!抜け駆けなんて許さないわよ!」
「私は政宗様が愛おしいわ♡逞しくて、あの凛としたお姿…胸が焦がれる」
女達は黄色い声を上げ、思いの丈を口々にしている
(女とは騒がしい生き物だな)
信長の左腕とし、秀吉が表舞台に立つならば光秀は影を歩く
城下内でも光秀の顔を知るものはいない
ここ安土は民が皆々、平穏に暮らしている
安土内の異変はないかも兼ね、一人安土城下を歩いていると子供たちが元気よく遊びまわっている
(これも信長様の楽市楽座のおかげが)
辺りを見回し、感心げに微笑む光秀
その時、一人の幼子が光秀のすぐ目の前で転んでしまった
ドテッーーー
「大丈夫か?おや、怪我をしたようだな」
目には涙を浮かべているが泣くまいと必死に耐えている
光秀は子供の目線に合わせ肩膝を折り子供に向き直り
「手を見せてみろ。擦りむいだようだな、そのまま動くでないぞ」
着物、手足に付いた土を綺麗に祓い、懐から手ぬぐいを出し、躊躇いなく引き裂くと子供の手に巻き付ける
すぐ、母親らしき女が駆け寄り、何度も光秀に礼をいい頭を下げる
「これで大丈夫だ、帰ったら手を洗ってこの布を変えるんだそ」
「こちらが悪いのに、何から何まで本当にありがとうございます、こら、代彦、お礼をちゃんと言いなさい」
「お兄ちゃんありがとう、俺、強くなりたいんだ。だから痛くても泣かないって決めた」
光秀は一瞬驚いたが、笑を浮かべ子供の頭を撫で
「そうか、鍛錬を怠らず、すくすと成長することだな」
「わかった!おれ、頑張る!ありがとうお兄ちゃん!」
子供は母親に手を引かれ去っていく、まだまだ甘えたい年頃の幼子は何とも嬉しそうな顔をしていた
武家の子として生まれた光秀にとって、母親に甘える言う感覚は持ち合わせていない。幼少期より大人と同じ扱いで育てられ、喜怒哀楽を表にだす事もない
ただ、無邪気に母に甘える幼子を見て何かしら、引っかかるものを覚えた