第3章 白銀の陰と陽 【R18】
気持ちを落ち着け最後のひと針を縫い終える
パチンっ
「はい、出来上がり、」
「綺麗な仕上がりだ。礼を言うぞ」
優しく曇のない微笑みが広がる
(光秀さんのこの優しい眼差し…好きだなぁ)
時折見せるめいだけの特別な顔
「あっ、そうだ、三日後、光秀さんの誕生日ですよね!」
(確かに俺の生まれた日だな。なぜこいつは嬉しそうにしている?)
「何が嬉しいんだ?嫌だろうが日は過ぎる」
「光秀さんが生まれてきた大切な日ですよ!!」
(大切…か、皆無な事を)
「そうか」
いまいちピンと来ない光秀さんを他所にめいは目を輝かせふにゃふにゃと笑っていた
「信長様からのお呼びもかかってなかったですよね!?その日、御殿へ行ってもいいですか?お祝いしたいんです」
「あぁ、構わぬ、俺は今から人と会う、またな、めい」
羽織を翻し光秀はめいの部屋を後にした
――――――――――――――――――――
廊下を歩いていると一人の男がこちらへ歩いてくる
(厄介な男にあってしまったな)
表情も変えず飄々と歩いていくと男は光秀を見て眉間に皺を寄せる
「光秀、またお前は軍議に出なかったな、何をしていた」
はぁ…と大きなため息をつく秀吉
「秀吉、ため息ばかりついておると早死にするぞ」
「誰のせいだと思ってる。お前はこの安土の秩序を乱しすぎた」
「秩序を乱すか、それは俺に限った事ではなかろう。心配するだけ無駄だ」
「心配ではない、忠告だ。今、大きな戦も良からぬ知らせも俺の耳には入ってはいない。だからこそ、秩序を保ち、何時も万全の体制を整えて置かないといけないだろうが」
「やれやれ、お前の小言は聞き飽きた」
(他に言う事はないのか、こいつは)
「秀吉、無駄だ、やめとけ」
(また面倒な奴がきおったな)
「本当、毎日同じやり取りしててあんた達、よく飽きないですよね」
面白そうな顔をした政宗と呆れ顔の家康が二人のやり取りに野次を飛ばす
「お前達もだ」
「政宗、お前はいつも好き勝手ばかりするわ、家康は愛想がないわ…」
秀吉の小言はさらに拍車をかける
(聞いておれん、時間の無駄だ)
「こら、光秀、話は終わってない」
「俺は先を急ぐ、ではな」
振り返ることなく光秀は去っていった