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愛を紡ぐ~二人の欠片(カタチ)~

第23章 記憶喪失~家康~


家康の声は少し震えている
めいを恐怖に陥れるものは例え夢でも取り払いたい

「わ、私…怖い夢を見てて…そ、その…」

「思い出して言わなくてもいい。もう大丈夫だから、安心して」

(俺が絶対守る。だから、安心してふにゃふにゃ笑っててほしい)

呼吸が整うまで抱きしめた手を緩めることは無かった

「ごめんなさい…迷惑かけて…」

「迷惑じゃない。絶対俺が守るから」

家康の目からひとすじの涙が頬を伝った。見せるまいと肩に顔を埋め隠していると

「ありがとう。もう大丈夫だよ…」

いつまでも抱きしめてはいられず、その手を緩めるとそっと褥に寝かせ

「少し襖を開けておくから、何かあったら、起こして」

布団をかけ家康は隣の部屋へ戻った
一枚の襖は石垣のように硬く冷たい壁のように家康の目に写った



翌日、二人は御殿へ戻り、家康は公務へ向かった

(また光秀さんたちに絡まれなければいいけど)

不安を抱きつつ、簡書に目を通す。家臣からの報告に文を書いて預けひと通り目処の立った所で部屋を出た

(めい?)

庭に向かう縁側に座りわさびに餌を与えている


「わさびって言うんだね。ごめんね、何も思い出せなくて…」

わさびはめいを覚えている、鼻を擦り付けじゃれ付き甘える姿にめいから笑顔が零れる

(笑ってる、良かった…)

「あ、家康お帰りなさい」

「ただいま」

少し離れ座るとわさびは家康にじゃれ付いた

「わさびは家康の事が好きなんだね」

「さあね。ただ、怪我してたから助けてずっとここに居るけど」

まだ甘えたい盛のわさびは頭を擦り付ける、優しく頭を撫でていると家康の懐へかきつき何かが落ちる

「これ…」

ふと拾い上げた黄色い布で作られた小さな袋を見て、めいの動きが止まる

「なんだろ…何か忘れてる事が…」

それは以前めいが作ってくれたお守り袋。家康は肌身離さず持ち歩いている

「それは俺にとって大切なもの。中にはでざいんがって言う紙に書いた絵が書いてある」

「でざいんが?…そっか。はい、汚れてないし良かった」

めいからお守り袋を貰い懐へしまった
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