第23章 記憶喪失~家康~
「めい、家康の元で不自由していないか?ちゃんと飯食ってるか?」
「あ、はい。良くしてもらってますし、ご飯も食べてます」
「家康様は本当にお優しい方ですからねめい様が安心させれていらっしゃるなら良かったです」
「へえー。家康が優しいね?俺ならもっと優しく、尚且つ美味い飯も食わせてやるぞ?」
秀吉、三成、政宗と取り囲み矢継ぎ早に話しかけられている。酌を要した信長はただ悠然と盃を傾けるばかり
「あ、あの…」
困り果てためいをみて信長は
「めい、酌はもう良い。貴様も戻って飯を喰え」
「あ、はい…では失礼します」
(やっと戻ってきた)
「家康、お酒呑む?」
「いや、いい。ほら、折角の料理食べなよ」
「うん」
嫉妬、もどかしさ、致し方ない気持ちが入り交じり交わす言葉は少なく宴は幕引きとなった
夜も更け安土城に泊まることになっている二人はそれぞれ湯浴みを済ませ、めいは元居た自身の部屋に入り家康は隣の部屋へ入る
(触れられそうで触れることの出来ないこの距離)
一人褥に置くことが気になって仕方ない。隣の部屋とは襖を隔てただけだがその襖さえ分厚く隔たる壁に見える
「家康、起きてる?」
「なに?」
「あ、そ、その…今日はありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ」
遠慮がちにかけられた声、ひねくれた自身の性格を恨む。素っ気なくただ一言向けた言葉
(俺も早く寝よう)
聞こえないうにため息を漏らし布団へ入った
「…っっ…」
襖越しに何か聞こえる
(何?)
ふと目を覚ますと魘される声が聞こえる
物音を立てないように静かに起き上がり様子を伺うと
「…だ、誰!?…っっ」
魘されるめいが心配になり襖を開けると、汗をかき呼吸が荒く乱れ
(めい!)
家康はなりふり構わずめいの上半身を抱き起こしそっと胸の中に抱き寄せた
「めい、大丈夫。俺がいる」
(怖い夢を見てたんだろうね。思い出せなくても俺は絶対守る)
優しく背中をさすり、肩に顔を埋めると
「はぁ…っ…い、いえ、、やす?」
めいはぼんやりとした口調で目を覚ます
「あんた、魘されてた。怖い夢を見てたんだろうね。もう大丈夫だから」