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愛を紡ぐ~二人の欠片(カタチ)~

第23章 記憶喪失~家康~


太陽が真上を指す頃、家康は書庫に来ていた

(何が手がかりが載っていないか…)

気持ちだけが焦り、なんの解決も出来ていない
今は信長の命で誰も無闇に近づけるなと御触れが出ているが、政宗や光秀がいつ隙いるか分からない

(今は女中が着いてるから安いいけど油断は出来ない)

何冊か書物を手にし、足早に部屋へと戻った

「めいいる?」

「はい。どうぞ」

襖を開けるとめいは部屋の掃除をしていた

「まだ寝てなよ」

「で、でも、寝たままでいるなんて…申し訳なくて…」

「まだ顔色も良くない。そんな状態でうろうろしてたら、政宗さん達に絡まれるだけだ」


(何があってもあの人達に関わって欲しくない)

焦る気持ちが先走り口調がきつくなり

「ごめんなさいなさい…私、何も思い出せない上に家康さんに迷惑をかけてしまって…」

(しまった…)

めいは座ったまま顔を俯かせぐっと拳を握りしめ涙を堪えていた

「違っ…怒ってるんじゃない。無理に思い出さなくていい」

肩に触れようとした手は宙を掴み、そっと降ろされる
本当は抱きしめたい。触れたい気持ちをぐっと堪えた

「でも、このままじゃ家康さんに迷惑が…」

「かからない、さん付けも敬語も要らない。ただ、あんたは笑ってくれればいい」

(あんたのふにゃふにゃ笑う顔、それが俺には今一番大切なんだ)

「どうして?」

「無理に思い出す事に神経を尖らせるより、笑っているほうがいいってこと」

天邪鬼な自分の性格が邪魔をして素直な言葉が濁ってしまう

(もし、このまま記憶が戻らなかったら…だめだ。考えるな)

気持ちが渦巻く中、女中から声がかかり

「失礼します。家康様もお戻りになられていたのですね。昼餉はご一緒にされますか?」


「ああ」

「かしこまりました」

一礼し、女中が下がると

「あ、あの…家康さん、ご一緒していいんですか?」

「さん付け、敬語要らないって言った所。たまたま一緒にいるから、一人より二人の方がいいんじゃないの?」

(俺はあんたと片時も離れたくない)

左腕に痛みが走り

「…っ」

「ど、どうしたの!?」

めいが驚き家康の横に来るが

「この間、ワサビが突進してきて打ち身になってるだけ」

ワサビのせいにするのも良くないけど、、本当の事は言えない


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