第23章 記憶喪失~家康~
「くっ…」
腕を掠めた銃弾傷が少しばかり響く
隣の部屋ではまだめいは眠っているはず。障子越しに映る空は薄暗く夜明け前だと物語る
(くそ…油断した俺が馬鹿だった)
顕如を崇める元僧侶の一派がまだ捕らえきれず水面下で動いていた。包囲すべく信長達と共に戦場へ向かい、めいを庇い銃弾が腕を掠めた
「掠めたとは言え、俺の不注意だ」
あれから四日経つ。一人残らず捕らえたのは良かった。が、目の前で負傷した家康を見ためいはその場に倒れ、目覚めると記憶を無くしていた
(どうすれば、めいの記憶は戻るんだ)
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丸一日、めいは目を覚ますことなく眠り続けていた。
片時も離れず傍に居たかったが、負傷した身、秀吉が変わりに付き添い目を覚ますと家康は痛みを堪えめいの側に駆け寄った
「めい、良かった。あんたが目を覚ましてくれて」
「あ、あの…ここは…どこですか?」
(え?何言ってるの?)
「ここは安土城だよ、あんた、丸一日眠っていたんだ」
「安土城?どうして私は安土城に?」
「めい、どうしたんだ?」
秀吉が問いかけると
「貴方は私の事を知っている方なのですか?」
「…」
秀吉は目を見開いたが口をつぐみ
「具合が悪かったのか、倒れていてな。ここまで運んだんだ。気にせずここに居るといい。信長様よりそう仰せ使っている」
「で、でもご迷惑ではありませんか?」
「気にすることは無い。まだ、顔色が悪い。寝ているんだな」
「ありがとうございます。あ、あの…お二人のお名前を教えてください」
「俺の名は豊臣秀吉、こっちにいるのは徳川家康だ」
「秀吉さんに家康さん。親切にして頂いてありがとうございます」
秀吉は家康を連れ、部屋をあとにした
「家康、落ち着いて聞け」
「落ち着いてます。めいは恐らく記憶が欠落しているんでしょ?」
「そうだな。一時的な物だと聞いたことはあるが」
(俺のせいだ…俺のせいでめいは)
「家康、自分を責めるな。お前のせいではない」
秀吉の声も家康には届ききらずぐっと唇を噛み締めた