第21章 空に舞う花~光秀~【R18】
(あ、あったあった)
「こんにちわ」
「おや、めい様、こんにちわ」
「金平糖が入ったと聞いたのですが」
「ええ、少しばかりですがありますよ。少しお待ちを」
小さな壺に白くキラキラとした金平糖が入っていく
「今日は色のついた物も入ってるんですよ」
「わぁー綺麗な色!」
紅花から少し色を付けた金平糖はほんのりと赤みを帯びた夕日色に輝いてる
現代なら、色とりどりの金平糖を見かけるが、この時代ではとても珍しい
「今は戦もありませんし、この様子なら、安定して入手出来るかと思います」
「ありがとうございます。これ、頂きます!」
支払いを済ませ店を出る。お気に入りの巾着に金平糖の小瓶をしまい、溶けないように真っ直ぐ城へ戻った
信長へ金平糖を献上すると、新しい羽織の新調依頼が舞い込む
(やっぱり信長様は黒地にどーんと刺繍入の煌びやかなものが良いかな)
光秀は一向に見つからない。気分を変えて自室でデザイン画を書いて気分転換する事にした
「…結局光秀さんに会えなかった」
何枚も描いたデザイン画。どれもしっくりこない。何度も光秀の顔が頭をよぎり筆が止まり止まりになる
(日もだいぶ傾いてきたな…)
日が落ちれば花火が上がる事になっている。自室からは少し見えずらい
「…花火…後1時間くらいしたら上がるかな…」
時計もない時代、感覚と日の傾きでおおよその時間は推測できるようになってきた
モヤモヤしたままの気持ち。筆から墨が滴り落ち和紙を汚す
瞬く間に黒く染みは広がり筆を置いた
(…もうやめよ。全然描けない)
筆を洗うため勝手場へ向かった
途中三成が声をかけてきた
「めい様、どこかに行かれるのですか?」
「うん、筆を洗うのに少しお水をもらおうと思ってて」
「そうでしたが。先程光秀様が天守閣へ向かわれてたので、てっきりそちらに行かれるのかと思ったのですが」
(え?帰ってきてるの?)
「そっか、光秀さん帰って来てるんだね。ありがとう!行ってみる!」
「いえいえ、お役に立てて光栄です」
屈託のない天使スマイルで光秀の居場所を教えてもらい心が軽くなった
(筆洗ったら、天守閣へ行こう)
足取り軽く勝手場へ向かった