第21章 空に舞う花~光秀~【R18】
(どこいったんだろ…)
城の中をぐるぐると駆け回る。秀吉に見つかれば小言を言われるのは見えている
「こぉら、めい、廊下は走るなって言ってるだろ」
(ギクっー!!)
見つかった…
「ひ、秀吉さんご、ごめんなさい!!ちょっと急いでて…」
「ったく、嫁入り前の娘が裾をはだけさせて何してんだ?」
眉間に皺を寄せる秀吉。心配症の人たらしの尋問は簡単に通過出来るはずもなく…
「そ…その…光秀さんを探してるの…」
「光秀を?そう言えばから見ていないな。信長様も何も言ってなかったが、またどこかへ行ったのか」
やれやれとため息を深く吐く
今日は政宗がここ安土で花火をあげると提案し、光秀に一緒に見たいと話した日となっている
「秀吉さんも見てないんだね…。ありがとう、部屋に戻るね」
ペコっと頭を下げ肩を落とし部屋へと帰っていった
「どこいったんだろ…」
ため息は漏れる一方。確約した訳では無い
花火を見てどうする?と不可思議な顔をされたのも事実
(興味ないか…花火って言われても)
乱世の世で花火は珍しいもの。南蛮品の好きな信長は目新しい物好きの政宗の花火話を二つ返事で了承した
それはめいにとっても嬉しい事だった。夜空に舞う色とりどりの花火をこの時代で見られることがとても嬉しかった
「うーん、せっかく浴衣も縫ったけど…」
近くの光秀の御殿からは良く見える位置になると信長に聞いていた。そこで二人で見たいと思い縫い上げた浴衣
着ることなく葛籠の肥やしになるのか…些か悲しくなってきた
「めい様、いらっしゃいますか?」
「ん?三成くん?どうぞ」
「失礼します」
ため息が聞こえていないか心配になりながらも三成を部屋に通した
「どうしたの?」
「実はお願いがありまして」
それは時折頼まれるお使い、金平糖が今日、市で買えるとのこと
三成もこれから信長の政務に携わるため、もし城下へ出るならと依頼してきた
「いいよ。行ってくるね!」
「ありがとうございます。これはお代です」
お金を受け取り気分を変え城下に出ることに
昼下がり、まだ蝉の鳴き声は響き渡るが、木陰を通ればほんのりと涼しい風が肌を掠めた