第20章 始まりの奏~三成~
ふと、一軒の露店で足を止めた
「これ、花火だ!」
「おや、お嬢ちゃん、詳しいね」
「こんな手持ちの花火あるのか?」
「うん、打ち上げよりずっと小さいけど、綺麗だよ」
竹で心棒を作り和紙を筒状に丸め、先端に紙縒りの様な薄い紙が付いている
「珍しいな」
「河原で三人でやろうー!」
勘定を済ませ二人の顔を見ると目と目で何かを察しあっていた
(ん?何だろ?)
「どうしたの?」
「ん?何も無いぞ?ほら、行くぞ」
「あっ、待って!行こ、三成くん」
「ええ、行きましょう」
心做しか三成の表情も硬かった
小さな提灯を貰い中の火を花火に付け、黄金色に咲き乱れる火花を堪能する
「綺麗だね」
(ただ、この時代の花火って、現代の花火と匂いが違って、何だかツンとした臭いがきついな…)
「とっても輝いてますね」
「小さな手持ちの花火も風流だな」
政宗は二本の花火をし終えたところで、立ち上がった
「どうしたの?」
「あぁ、悪い、信長様に頼まれていた物を買い忘れてな」
「信長様の依頼??」
「あぁ、忘れるところだった、三成、めいを頼むな」
「はい、政宗様、お気を付けて」
政宗はちらりと三成と目線を交わしその場を後にした
少しばかり赤みを帯びていた夕空は姿を消し、空は黒く雲一つない世界へと変わっていた
「すっかり暗くなったね…」
「そうですね、そろそろ戻りましょう」
「うん、秀吉さんが心配するしね」
花火をしっかりと水に浸し鎮火させ、持ち帰る
たた、気になるのは消した後も香る独特なこの匂い
(どこかで臭った事あるような…でも気のせいかな)
もやっとした気持ちを終い二人は安土城へと戻り始めた
露店も次々と店じまいを始め人通りも少なくなっている
先程、花火を買った店は既に店じまいし、人影もない
「あれ?何だろ?」
露店の台の下に何かが落ちている
「どうかしましたか?」
「あの台の下に何かが落ちてるの」
近づくと麻で出来た小さな袋が落ちている
「見てみますね」
徐に三成が中を見ると黒く丸い弾が入っている
「…」
「どうしたの?」
三成が眉間を寄せ何かを悟る
「いえ、ただ、これは持ち主に渡した方が良さそうですね」
ふと、横目で見ればいつもの優しい笑顔になっていた