第2章 三日月に映る光と影 【R18】
「その顔は知らされてないようだな」
―貴様は幸運をもたらす女だ―
信長の言葉が脳裏を過ぎる
(政宗と生きて行けないなんて…考えられない)
一瞬、頭が真っ白になったが唇を噛み締め意を決し信長に向き直る
(例えすぐ認めてくれなくても、絶対に政宗と生きる)
「信長様、わ、わた…」
「信長様、失礼します」
(まっ…ま、政宗!?)
信長に断りをいれ、片膝を立て名の前に座る政宗
徐に懐より小さな巾着を出し、左手を出すように命じる
わけも分からず、おずおずと左手を差し出すと掌を下向きに手を取り指に何かをはめた
「こ、これって…」
細かな彫刻を施したそれは指輪であった
「この場で俺は誓を立てる、めい、俺とともに奥州へ来て欲しい。おれの許嫁として、お前を迎え入れたい」
皆が一斉に二人を見据えた
目には大粒の涙が目に溜まり、頬を伝い溢れ出す
「は、はい!」
ぽんぽんと頭を撫であやせば人目も憚らず抱きつき、子供のように泣きじゃくる
「信長様、めい奥州の連れて帰ります。どうかお許しを」
「おい、政宗、お前っ」
「秀吉、良い。政宗、貴様も突拍子もないことを仕掛けるな」
「良かろう、但し、こやつを泣かすのであれば俺は容赦なく斬り伏せる」
「泣かせる事はありません」
(鳴かせる事はあってもな)
女中を呼び、女中と共に広間から一旦出ることにした
「めい様、喜ばしいお話を聞く事が出来、私は幸せです。湯殿にお湯を入れておりますので、お入りになり、気持ちを落ち着かせて下さいね」
湯殿まで手を引かれ、少し温めの湯につかり気持ちを落ち着けることにした
一方の広間は…
「とんだ策略家だな」
と、光秀に揶揄され
三成は汁椀に落とされた金平糖にも気付かず口をつけ
「この汁、不思議な食感と味ですね」
と、告げれば家康は皮肉を口にする
このような賑わいの中、政宗は広間を後にし、めい自室へと向かった
自室へと戻りまだ少し濡れている髪を拭いていると、政宗がやってくる
「政宗…」
照れた顔を見せながら駆け寄るとしっかりと抱きしめられる
「湯冷めする前に俺の御殿へ行くぞ」
「うん!」
仲良く指を絡め政宗の御殿へと赴いた
先に部屋へ入り、湯殿へ行った政宗を待っている