第12章 家康誕生祭~その手の陽だまり~ 【R18】
「いただきます」
二人で膳を囲み家康のの反応を待つ
(どうかな…)
「美味しいよ」
ぶっきらぼうだけど、ぱくぱくと箸を進め食べてくれる家康
「良かった…」
安堵の表情を浮かべ自分も箸をつける。味見をしていても、唐辛子を好んでかける家康の味覚に合うか不安だった
女中に料理を教えてもらった事、針子の仕事のことなど他愛ない話をしながら夕餉を済ませ、近くの神社で行われている祭りに二人して出かける事にした
(家康と出かけること出来るんだ)
現代で言う商売繁盛のような祭りがあると家康に教えてもらい二人して支度する
「あ、家康待って」
葛籠を開け作ったばかりのものを首に巻いてみせる
「これ、何?」
「ふふ、家康お誕生日だから、寒くないように縫ったの…」
背伸びしてくるりと首に巻いてみる
(気に入ってくれるかな…)
山吹色の生地は家康の首元を艶やかに彩った
「俺の誕生日にわざわざ作ったの?」
さして誕生日というものに興味を示さない家康。長い間のとして生きてきた彼にとって、誕生日とはただ一つ歳をとるに過ぎない
「家康が生まれてきてくれた日だもん。生まれてきてくれてありがとう。そしておめでとう」
ふにゃふにゃと笑い巻き終わりを綺麗に整えるとぎゅっと抱きしめられ大好きな手が頭を撫でた
「あんた、本当に変わり者。俺の誕生日がそんなに嬉しいって」
家康らしいひねくれた言い方さえ愛おしくめいいっぱい抱きしめ返す
「家康が生まれてきてくれたから、出会えたんだもん」
顔を上げると目を見開き徐々に微笑みを見せる家康の目と目が会い触れるだけの口づけを交わし二人は祭りへと出かけた