第12章 家康誕生祭~その手の陽だまり~ 【R18】
前持って女中には夕餉の支度はしなくていいとこっそり告げていた。女中達も、二人の仲睦まじい姿に微笑み、料理上手な女中は時折、料理を教えてくれた
(政宗もいっぱいお料理教えてくれたなぁ)
こっそりと政宗に料理を教わったこともある。愛する家康の為に美味しい料理を食べてもらいたい…その一心でひたすら紙にレシピを書いては大事にしまってきた
(これと、あとこれも切ってお鍋に入れて)
気づけば鼻歌を歌い楽しそうに料理をしている。背後から誰かが近づいてきているとも知らず…
「きゃっ…」
「ただいま」
「い、家康!?」
(ビックリした…)
お玉を置くと同時に後ろからぎゅっと抱きしめられ、驚きと体に馴染む暖かさが肌につたわる
「なんで台所に居るの?」
帰って部屋を見ればめいの姿はない。心配した家康は家臣にここにいると聞き、やってきたと言う
「そ、それは私の作った夕餉食べてもらいたくて」
家康の吐息が耳にかかり、震える声で告げる
(家康の喜ぶ顔が見たいから…)
「めいの手が荒れるからしなくてもいいよ」
「でも、家康に美味しい料理食べてもらいたいもん…」
「そう」
身の回りの事は女中が行う為、手料理を振る舞うこともない。だからこそ、尚更、今日という日を自分のもてなしで喜んでもらいたい
「家康の口に合うかわからないけど…」
首筋に口づけを落とし家康はよりつよく抱き締めた
「あんたが作ったものを食べないわけないでしょ?」
「良かった…盛り付けして運ぶから部屋で待ってて」
(良かった…食べてもらえる)
「俺も手伝う」
「ううん、休んでて。帰ってきたばっかりだもん。すぐ運ぶから」
(今日だけは譲れない)
最期まで自分でやりたいと告げると家康は素直に聞き入れ、部屋へと向かう
「分かった。待ってる」
「すぐ行くね」
料理を盛り付けると、慎重に膳を運んだ