第11章 その手に触れる砂と籠 【R18】
数日後、信長の遣いで城下に出ていた
(何だか賑やかですね。これも信長様のお力あってなのでしょう)
「おや、三成様ではありませんか」
「こんにちわ」
「この間はありがとうございました。三成様のおかげでいい団子が作れ、繁盛しております」
茶屋の店主は三成から、湧き水の出る地点を教えてもらい、そこの水を使い団子を作って売り出したところ、忽ち人気が上がった
「是非、食べて行って下さい」
「ありがとうございます」
団子を待っている間、町娘達達の声が聞こえてきた
「はぁ…秀吉様に会えなくて辛いわ…」
「この間は旅芸者の方に道案内してたけど、お美しい方で…嫉妬しちゃったわ」
「あの方ね、本当にお綺麗だったわ…秀吉様の事、まんざらでもなかったご様子…」
落胆する女達の声がする
(しっと?ですか…)
一人の女が三成を見て声をかけてくる
「三成様、いらしてたのですね!」
「こんにちわ、皆様」
あれよあれよと三成は女達に囲まれた
「三成様は好いた女子(おなご)様が他の殿方とお話されていて、心が痛むことはありませぬか?」
「心が痛むですか?」
眉を顰め溜息まじに女は話を続ける
「ええ、はしたない事だとは分かっておりますが…心がもやもやして…胸が痛むと申しますか…」
女達はうんうんと首を縦に振り、胸を抑え個々に話をしている
「好いたお方が…例えその気がなくても仲睦まじく話をされていたら…ね」
(嫉妬…?もやもや…胸が痛い…?)
「そうですね、私も何だか胸が痛みます」
「やはり、三成様もそうなのですね…お話を聞いて下さりありがとうございます」
晴れやかな顔で女達はお礼を述べるとその場を後にした
数日後、三成は書庫に来ていた。戦術に関する書を探し手に取った書物の横に不可思議な書物を見つけた
(色恋指南書?何でしょうか?)
表紙を捲ると、乱れた着物の女を後ろから抱きしめる男の絵が書かれている
(不思議な絵ですね)
きょとんとした顔でぱらぱらと書物を捲っていくとある言葉に目が止まった
ーー色恋に嫉妬はありけりーー
(これは茶屋にいらした方達が仰った事のようですね)
そこには好いた者が他の異性と仲睦まじく話していると胸が痛む、悲しい気持ちになる、怒りが込み上げるなどと書いてあった