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愛を紡ぐ~二人の欠片(カタチ)~

第10章 声に映し路と響 【R18】


(顕如…さん)

本堂へ入っていく件にを追いかけた。無我夢中で追いかける

「きゃっーー」

足が縺れ、転んでしまった。手脚に走るひりひりとした痛みがはしるが見失いたくない。本堂をめがけまた走り出した


「はあはあ…ここだ…」

息を切らし、そっと本堂の扉を開ける。念仏を唱える姿を見る目にした


唱え終わるのを待ち、思い切って声をかける

「顕如さん…」

「お嬢さん、なぜここに来たのだ」

顕如は顔を歪ませ苦しそうに告げる

「どうしても。あなたに逢いたかったんです!お願いですから…一人で苦しまないで…」

側へ駆け寄り、崩れるように座り込む。唇を噛み締め訴えるように顕如を見つめる


「俺は死に損ないの男だ。お前のように日の目を見る生き方など出来んのだ」

「死に損ないなんて勝手に決めつけないでください!どうして、自分を大切にして下さらないんですか…」

生きている世界の違いが大きすぎる。背負うもの、失うものも、得るものの差。それでも変わらない思いは溢れ、言葉をつむぐ

「あなたは復讐鬼なんかじゃない…その目に映るもの、思うものは優しさを宿しています」

「俺は信長を恨み生きてきた。あの男の首を取る事が俺の生きる糧だった…俺を慕い共に歩んだ者達さえ失ったのだ」

苦痛…後悔…裏切り…顕如の心の中に宿る想いは独り遊戯にしか過ぎなかった。そう深く刻まれている

「全て失った訳ではありません!信長様もあなたを心配しています…何より…私はあなたに死んで欲しくない!」

「信長が俺を心配する?戯言を言うのはよせ。ここはお前のような者が来る所ではない。早く帰るのだ」

顕如は立ち上がり、背を向けた

「待って…お願いですから行かないで…一人で苦しまないで下さい…」

(もう…背を向けて一人で抱え込まないで)


その背に縋り付く。袈裟を掴み広い背中に顔を埋めた

「顕如さんがあの時、目を覚ましてくれて、私は嬉しかったんです。何度も助けてもらったあなたの表情はとても優しかった…だから」

拳にに力が入り白く浮き立つ。泣いてはいけない…そう思うが涙が溢れ止めることが出来ない

「お嬢さん…」

顕如の苦しげな声が聞こえると共にこちらに向き直ると視線が重なる

「どうしてお前は俺を心配する…悪い事は言わん。早く帰るのだ」


「嫌です!わ、私は…あなたが好きなんです」
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