第10章 声に映し路と響 【R18】
復讐鬼として生きる事を選んで欲しくなかった。タイムスリップしてすぐ、助けられたあの日の優しい眼差し、抱きしめられた時の温もり…その全てが脳裏に焼き付いている
(私…顕如さんの事…好きなんだ…)
口づけが落とされた時、拒む理由はなかった。自分の中で渦巻いていた気持ちは彼を慕うものだと確信した
「っっ…」
逢いたい。だが、会って顕如にかける言葉が見つからない。生きてきた時代の違いを目の当たりにする。背負うものも、失うものも比べ物にはならないこの戦国の世で、自分の言葉など軽薄な言葉でしかないと痛感した
(どうすれば顕如さんの心の重荷を軽く出来るだろう…一人で背負って欲しくない)
考えても答えなど見つかることはなく、夕餉の刻を迎えた
(目元冷やしたから大丈夫かな…)
周りに気付かれないようにと手ぬぐいを濡らし目元に暫く当てていた。女中の声がかかり、広間へ向かい夕餉を取る
「顕如はここを去ったようだな」
「そうみたいですね。まだ傷も完全には癒えてないですけど」
光秀と家康は件にの事を話している
「俺の作った飯でも食ってたんだ。じきに治るだろ」
(皆もやっぱり心配してるのかな…)
箸が進まず伏せ気味になっていると
「こら、めい、ちゃんと食わないと倒れるぞ」
「あ、うん、ついぼーっとしちゃった…」
(皆に迷惑かけちゃいけないもんね…今だけでも忘れないと)
進まぬ箸をを動かし、お茶で何とか流し込み夕餉を終え、自室へと向かった
(信長様?)
廊下の角で信長と会い声をかけると人差し指を口元にあてた
「貴様、俺に付き合え」
「え?ど、どういう…」
紙に包まれた何かを持っている。尋ねようとしたが秀吉の姿を見た信長はめいの手首を掴みすたすたと天守閣へ向かった
(ど、どうして!?!?)
「秀吉に見つかると厄介だからな。声を出すな」
「っっ…」
(な、何がどうなるの!?!?)
訳の分からないまま天守閣へと連れてこられた
「あ、あの、、信長様、どうして秀吉さんの目を裂避けたんですか?」
「俺がこれを持ってきたからだ」
包み紙を開くと金平糖が入っている
「こ、金平糖…!?」
「あやつはすぐに俺から奪い取る。故に見つからぬよう取って来た」
(ふふっ、、信長様って可愛い一面もあるんだ)