第12章 No.12
そして今、風呂に入ってる。
「あぁ、もう!トシさん、動いちゃダメ!」
「だ、だって、くすぐってぇ!」
オレは目隠しされて、服を着たままのゆきに身体を洗われている。
他人に身体を洗われるなんて物心ついてこの方ない。しかもゆきが今洗ってるのは秘部だ。感じてしまいそうな自分が怖い。
やがてジャーッとシャワーをかけられ、手を引かれて脱衣所に連れて行かれる。ゆきに全身を拭かれ、浴衣を着付けてらもらう。その間、オレは一切このゆきの身体を見ることも触れることもできない。
濡れた髪をひとまとめにしてもらうと、次はゆきの番だ。
目隠しをしたゆきの着流しを脱がせる。
着物を着たままオレの身体を洗った為、汗びっしょりだ。
そこでふと思う。
せっかく風呂に入ってさっぱりしたのに、またこんなに汗だくになるのか。
「…… 」
オレはゆきの目隠しをスルリと取る。
「トシさん⁉︎」
「ゆき、目ぇ開けていいぞ」
「えぇ⁉︎ だって今、裸ですよね⁉︎」
「あぁ。だがまぁ、オレは男だし、別に裸を見られて恥ずかしいとかどうこう言うつもりはねぇ」
「でも…」
「だからゆき、オレの裸見ていいから、1人で風呂に入ってきてくんない?」
「はぁ⁉︎」
驚きのあまり、ゆきは目を開いてしまった。正面の鏡に映るオレの全裸にボッと顔を赤くし、またギュッと目を瞑った。
「トシさん、どうして⁉︎ 私、無理です!」
イヤイヤと首を振る。
オレの姿でやっても全然可愛くないからね、それ。
「せっかく風呂に入ってさっぱりしたのに、また汗だくになるのはイヤだからな。ま、適当に洗ってきてくれたらいいから」
そう言ってオレはまだ濡れてる前髪をタオルで拭きながら出口へと向かう。
「ちょっと、トシさん⁉︎」
ゆきは目を瞑ったまま手を前に出してオレの姿を捕まえようとバタバタしていたが、気にせずカラカラと引き戸を開けて脱衣所を出た。
それからしばらく脱衣所からは「えぇ⁉︎うそ‼︎」だの、「ムリムリ‼︎トシさーん!」だの聞こえてきたが、やがて諦めたのかカラカラと風呂場の戸が開閉する音が聞こえた。