• テキストサイズ

十四郎の恋愛白書 1

第10章 No.10


「とにかく、オレとゆきは今から万事屋のとこに…」

総悟からものっそい視線を感じる。

「…なんだよ」

オレは言葉を切って総悟を見た。

「土方さん、ゆきさんの姿で胡座をかきながら咥えタバコはやめてくだせぇ」
「あぁ⁉︎ うるせぇな。タバコに火は付けてねぇよ」

しかし総悟はじっとりとオレを見た。

「ゆきさんはそんな言葉使いはしやせん」
「あのなぁ、姿がゆきでも中身はオレなんだよ。女言葉なんか使えるか」

総悟は引かない。

「なら、せめて立ち居振舞いは直してくだせぇ。このままじゃ、ゆきさんが周囲から誤解を受けやす」
「 …… 」

ゆきを見ると、申し訳なさそうにこちらを見ている。

「…わかったよ」

オレはしぶしぶ胡座を掻いていた足を正座に直し、タバコを屑入れに入れた。

ホッとした様子のゆき。ずいぶん気になっていたのだろう。

そこで遠慮がちな声が響く。

「あのぉ…」

山崎が恐る恐る挙手しながら口を開いた。

「ゆきさんも、できたらもう少し副長らしく振舞っていただけたらありがたいのですが…」
「え?トシさんらしく、ですか?」

ゆきがコテンと首を傾げる。

うん、確かにそれは言える。
いや、是非ともそうして欲しい。
とりあえずオレはそんな無邪気に首を傾げたりしない。

「はい、あの…。ゆきさんの仕草は、普段の副長とはあまりにもかけ離れすぎていて、すごく気持ち悪…いえ、違和感があって…」

山崎の言葉に、近藤さんと総悟も激しく頷いた。

山崎、おまえ今、気持ち悪って言わなかった?

「トシさんらしく…ですか」

ゆきはしばらく考え、とりあえず正座から胡座に足を組み替えた。それからニコニコしていた表情を消し、眉間に皺を寄せ、タバコを口に咥えた。

「「「そう!それ‼︎ 」」」

山崎と近藤さんと総悟の声がハモった。
途端にオレ、いやオレの顔をしたゆきは嬉しそうにニッコリと笑う。

「「「ひぃ!」」」

青ざめる3人。

おまえらなぁ…。

「とにかく!オレとはゆきこれから万事屋に…」

そこまで言って、オレは体に異変を感じて言葉を切った。

「副長?」
「トシ?どうした?」
/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp