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十四郎の恋愛白書 1

第23章 No.23


さながら、何処ぞの王子が姫に求婚するようなポーズはかなり恥ずかしい。だがそんな事は言っていられない。
目を見開いて驚くゆきを熱い眼差しでじっと見つめる。

ああ、どうかこの指輪を受け取ってくれ。

しばらくの間固まっていたゆきは次の瞬間、くしゃりと泣き顔を作った。

「…はい!」

ゆきはオレの差し出した指輪のケースに、そっと手を触れながら返事をくれた。

それを聞いた途端、オレは立ち上がるとゆきを強く抱き締める。

瞬間、『オオ〜〜‼︎』という隊士達の祝福の雄叫びと拍手が一斉に巻き起こった。

「おめでとう!ゆきちゃん!」
「おめでとうございます!副長!」
「やったね!ゆきちゃん!」
「お幸せに!」

隊士や女中のおばちゃんたちが次々に祝福してくれる。

すっほりと腕に収まる華奢な身体に、愛しさが込み上げる。
好きで、好きで、愛しくて、大切で。
オレはゆきから一度体を離すと、ケースから婚約指輪を取り出し、ゆきの左手を取った。
指輪はスッとゆきの薬指に嵌った。

「…綺麗」

ゆきはポロポロ涙を流しながら愛おしそうに指輪を撫でる。そして真っ赤な目で微笑みながらオレを見上げた。

「ありがとうございます。こんな素敵な指輪…、私、信じられない…」
「オレの方こそ、プロポーズ受けてくれてありがとうな」

左薬指に光る独占の証。これでゆきにちょっかいかけようとする野郎共はいなくなるだろう。

ホッとしてゆきを再び抱き締めながら、今更ながらヒヤリとする。勢いで公開プロポーズをしてしまったが、もしかしたら断られる可能性だってあったのだ。受けてくれて良かった、ホント。

それにしても、こんな色気もシチュエーションの欠片も無い屯所の食堂でのプロポーズ、しかも大勢の目の前だ。しかしゆきは涙を流して喜んでくれている。やっぱりゆきはオレの天使だ。

「ゆき、絶対ぇ幸せにするから」

ゆきの髪に口付けながら誓う。

「はい…!」

鳴り止まない拍手に包まれる。

オレとゆきの未来が今、重なり合った。





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