第5章 ~参半~BE LOVED2
六番隊舎執務室
「失礼します。十番隊より書類をお持ちしました」
「...入れ」
少し遅れて聞こえてきた声に反応して中へ入ると、一人の男性がこちらを向いた
肩までの黒髪に貴族のみ着用の許される牽星箝を付けている中性的な容姿。四大貴族【朽木家】第二十八代目当主であり、六番隊隊長、朽木白哉がそこにいた
(この人がルキアのお義兄様…)
「御苦労…見ぬ顔だが…」
「十番隊第五席ハルカサラと申します」
「ハルカサラ…?」
「私を知っておられるのですか?」
「以前、義妹が友が出来たと、余り口を開かぬ奴が珍しく話したのだ。兄がそうか…」
「…お二人の会話に口添えが出来たのなら光栄です。ルキアは不器用ですから…白哉様から話し掛けては貰えませんか?」
「…今何と言った」
「あ…第三者が口を挟み申し訳――」
「そうではない。兄は今、私の事を何と呼んだのだ?」
「…白哉‥様と」
「緋真……」
白夜が哀しげに、懐かしげに私を見詰め、知らぬ名を呟いた
「え…?」
「ぃゃ…済まぬ、兄が亡き妻と同じ様呼んだのが懐かしく感じたのだ…」
「そうだったのですか…では私は別にお呼びしなければ」
「何故そう思う」
「その呼び名はお二人の大切な時間で生まれたものですから。これからもお二人だけの物です」
サラはそう言うと穏やかに微笑んだ
やはりこの娘…
顔も性格も緋真とは違う
だが空気が、仕種が似ている気がした
そして緋真同様、ルキアを気に掛けている―――
白哉様は立ち上がり私の目の前に立つと、綺麗な指で私の頬を撫でる
「…では何と呼ぶ?」
「...貴方のお好きな様に」
「白哉と…呼んでくれまいか?」
誰であろうと名前で呼ぶ事は許さなかった
初めて顔を合わす奴なら尚の事
なのに
白哉と呼んで欲しかった
「白哉……」
その声を聴いた瞬間、白哉はサラをそっと抱きしめる
「済まぬ……少しだけ、今だけこうさせてくれ…」
サラは、亡き妻を思い出したのだと思い、黙って頷くと少しの間、白哉に身を委せていた