第40章 ~拾玖~HOME
「...ホントに困ったもんなんスよ。どうも科学者ってのは、あこぎな生き物で...可能性ってヤツを追求し出すと、とことんやっちゃうんスよ」
「それは…崩玉のこと?」
喜助はその問いに答えずに話を続ける
「あこぎな生き物ついでに言うとね、実は藍染の事はそんなに憎いとか思ってないんです」
サラが僅かに眼を開いたのを見て、喜助は笑みを浮かべた
「そりゃ、酷い目に合いましたよ?藍染の所為で、アタシは無実の罪を着せられましたし、そのおかげで現世でひっそりと隠れ住むことになりましたし
何より、サラさんを始め、平子さん達を大変な目に合わせたんだ、決して許される事じゃない。
...けれど、何だか憎み切れないんスよ。藍染は...もう一人のアタシみたいな気がするんです」
「そんなこと...」
「いいえ、アタシがこの目の前の一線を超えちゃったら...藍染みたいになっちゃうでしょう。
いや、恐らくもっとひどいことをするでしょうね」
「違う...喜助さんはあの人とは...」
「殆どおんなじっスよ。アタシとあの人が違う所は...
超えてはいけない一線を越えるか超えないか...それだけの事なんスよ」
「どうしてそこまで自分を卑下するんですか?やっと...逢えたのに」
喜助は睫毛を伏せるサラを宥めるように、頭を撫でた
「すみません。急に現れたものだからまだ気持ちが付いてかないんス...それにね、崩玉だけじゃない」
「?」
喜助の声が一段と小さくなり、サラは首を傾げた
「その可能性ってのが、結果倫理に反するかどうかなんてどうでもよくなっちゃうんス。とにかく、自分の目標を達成できるまで止められない
それが後でどんな問題を引き起こすかなんて考えもしない...サラさん、貴女のことをです」
「私、ですか?」
言ってる意味が解らないのだろう
サラが不安げに見つめてくる
そんな視線を振り払うかのように、喜助は顔を伏せた