第40章 ~拾玖~HOME
「まだなんかしっくり来ないのよねー…ほら、アタシ達って死んだら躰は霊子になるじゃない?
だからまださ、ギン、アイツが現れるんじゃないかって…ホントばかみたいよね」
ケラケラと笑う乱菊は何処か寂しそうで、あの一件は多くの人に消えない想いを遺した
「ホントにサラが目を覚ましてくれて良かったわよ。前みたいに記憶無くなってたらどうしようかと思ったわ…アンタとじゃなきゃ、こんな話も出来ないからさ」
「そうね…」
笑みを浮かべる乱菊に私も笑みを返した。それは次に紡がれる内容を話やすくするため
「アタシさ、ギンのコト好きだったんだよねー…いくら幼馴染とはいえ、全然読めないアイツのコト」
「乱菊…」
「すぐにどっか行っちゃうし、何考えてるか分かんないし、いっつも能面みたいに笑顔貼り付けてるし。でも、そんなアイツが好きだった…
気付いたのはアイツがいなくなってから。ホントやんなっちゃう」
乱菊は喉で笑うと、私に優しい眼差しを向ける
「…アンタは?アンタの心のどっかにアイツは居た?」
私はゆっくりと目を閉じる
ギンが最期に紡いだ言葉…
〝ずっと好きやった”
あの言葉は自然と自分の心に降りてきて
私は眼を開けると、乱菊を見つめた
「うん…好き、だった」
「そう…アイツ幸せ者ねーこんなイイ女達に好かれちゃって。あ、でもちょっとだけね?ホンのちょーっと」
手で好きの度合いを表す乱菊の手は、豆粒よりも小さくて
私は笑ってしまった
「サラ、幸せになりなさいよ?」
「え?」
「アンタ昔から男運ないんだもん。そろそろ自分のコト考えてもいいんじゃない?」
「乱菊…」
「アタシも幸せになるからさ、アンタもなんなさい」
肩を抱き寄せられた私は胸がキュっと締め付けられる
「ありがとう乱菊…」
私達の目じりには、小さく涙が光っていた