第40章 ~拾玖~HOME
あの直後を思い出す
「お願いだ卯ノ花隊長!!!! サラさんを…サラを助けてくださいっ!!!!」
もう動くことのない彼女
だが四番隊隊長なら…喜助だけでなく、皆が卯ノ花に懇願する
「鬼道にできる事は医療と変わりありません。体構造は完治させます
後は彼女が生きる事を諦めなければ…彼女がそれを諦めるかどうかは、よく知っている筈です」
「...ありがとうございます卯ノ花隊長」
「何故お礼を言うのですか?“仲間”の命を救うのに、お礼の言葉などいりません。ですが私にも…こればっかりは判りません。何せこんな強い力は見たことありませんから...」
サラはそれから四番隊の特別救護室でいつ目覚めるかも判らない眠りについた
毎日のように隊長らが顔を出すが、全く眼を覚ますこともなく、月日が流れた
僕はその間に現世へと戻り、それから一度もサラを見たことが無い
たまに現世での任務で死神達が顔を出すが、敢えてサラのことは聞かなかった
向こうも何も言ってこないなら、それは何の変わりもないということだろうから
逢いたくない訳じゃない
いつも護りたいと、強く願う
思う反面、このままでいいとさえも思う
目覚めない以上、彼女に平穏が訪れているのも事実だから
...どうして恨まないのか
...どうして何度も立ち向かえるのか
怖くないのか
僕は怖い
サラの答えが判っているから
サラが目を覚ましたら…やっぱり言いたくなる
「ありがとう」って
...けど、まだ僕はそれを言えない
サラもまた「お礼なんていらない」というだろう
だからこそまだ僕がそれを言う資格はない
だが月日は、止められない
だから希望も絶望も味わう
それが当たり前だ。逆らうことは出来ない
それなのに、今があまりに穏やかすぎて、その摂理に逆らいたくなる
「(夜一さんもあんまし来なくなっちゃったし…)犬でも飼いましょうか...」
喜助はフゥと小さく息を吐いた
足元からガラガラと、戸が引かれる音がする
珍しい
滅多に来ない客にこんな姿を見せてはならないと、すぐ様体を起こす
「いらっしゃーい!」
開けられた戸から入ってくる光に目が霞む。逆光で象られた人物に、笑みを向けた