第39章 ~拾捌半~CRY2
崩玉を失った藍染は最早、指を動かすことすら出来なくなっていた
「私が負ける…?ふざけるな…勝者は世界がどうあるべきか語らなければならない…」
「語る?何を」
「自分の力への恐怖だ…私はその力がどれほど強力で間違った扱いをすればどうなるかを解っている。だからこそ皆が恐怖する。私こそが恐怖なのだ!!!」
「まだ解っていない…」
「!?」
臆面する余裕すら与えずに藍染に歩み寄る
「私達は戦いに、いつ何時も恐怖を忘れてはならない。
だからこそ、平和を望み、その為にこの刀を最小限に使うことを模索する。
私達死神は戦いを恐怖し、敵の力を恐怖し、そして何よりも己の剣に恐怖しなければならない…
それを知らぬ者に剣を握る資格など無い!!!」
叫んだのと同時に、藍染の鏡花水月は銀結晶に包まれ跡形もなく風化した
「命を奪うという事に恐怖するという事を忘れた者は唯の獣でしかないのよ...」
藍染の意識はもう無く私は解号を解く
「虚園は?」
「え?あ...」
突然の質問に喜助が答えをあぐねいていると、代わりに夜一が答えた
「今し方、黒腔が開かれたとの連絡があった少々怪我してる奴もおるが、皆無事じゃ」
「良かった...」
安堵の息をつき、事切れた藍染を見やる
その力を...
平和の為に使えていれば...
サラが月華を鞘に収めた瞬間、大量に吐血し体がよろける
「サラ!!!?」
喜助が支えようと手を伸ばすが、私はそれを制す
「まだ...やらなければいけないことがある...」
「ダメだ...そんな躰では...」
それでも無視し、歩みを止めない
「サラいい加減に...ダメだというのが解らないのか!?これ以上力を使おうとしたら貴女は死んで―――」
喜助は声を荒あげサラの肩を掴む
だが、振り返った顔を見た瞬間、言葉を紡げなくなる
サラは笑っていた
穏やかに、上品に、そして儚げに…
その美しい笑顔に熱いものが込み上げる
「喜助さん」
ふいに自分の名前を呼ばれて胸が苦しくなる
「...はい」
「闘わせてくれてありがとう...おかげで護ることが出来る...」
残心...
私はこの為に生きてきた