第38章 ~拾捌~CRY
空座町で、王鍵を作るべく現世に降り立った藍染は直ぐに異変に気がついた
尸魂界に残った隊長全てがそこに居るのだ
副隊長は何名か姿を見ないが、そんなことは極些細なことでしかない
通常ならば、真っ先に尸魂界で貝の殻を閉じる如く護りを固めるべきとの考え方をするだろう総隊長の山本元柳斎重國。
その山本が尸魂界を出て空座町にて、藍染を待ち受けているのである
そして、空座町には人間の気配を感じない
一見すると人間だけが居なくなってしまったかのように見える
だが、藍染は直ぐに理解した
この街は、空座町では無い。精巧に作られてはいるが偽物だ。では、本物の空座町はどこへ消えたのか
「...浦原か」
それは、包囲したものを尸魂界にあるものを移し替えるというものだった
藍染は、浦原がその技術を現実のものとし、実際に本物の空座町を尸魂界に移し替えた事を確信した
「...なるほど、素晴らしい技術力だ」
尸魂界を追放されて100年が経過しているが、浦原の技術力は全く損なわれてはいない
恐らくレプリカの方は科学技術局にでも作らせたのだろう。
...浦原ならもっと上手く作る筈だ
称賛に値する仕事ぶりだと伝えようかと浦原の霊圧を探る。だが、気配は感じられない。
どうやら隊長たちが戦闘可能にするだけして、自分は高みの見物のようだ
「(まぁいい…)さあ始めようか」
そんな彼らを見つめる偽の浦原商店の前では…
「なんだよ、藍染の奴にあっさりニセモノだってバレてんじゃねえかよ。科学技術局も大したことねえな」
「とんでもない。よくやってくれましたよ?科学技術局の皆さんは。それに、どんなレプリカを作ったところで、藍染には直ぐにバレちゃいますから」
その内容にジン太に疑問符が浮かぶ
「じゃ、なんでワザワザそっくりに作らせたんだよ、店長。どうせバレんならどうだっていいじゃねか」
「一つは、一応、空座町と同質のものでないと移し替えることが出来ませんからねえ」
「二つ目は?」
「...その方が雰囲気出ますでしょ?なんせ、これから決戦なんだから、会場は手をかけないと失礼ですからねえ」
「じゃ、店長は出ねえのかよ」
少しむくれたジン太は眉を寄せる
「それは...」
喜助の眼はハッキリと藍染に向けられていた