第38章 ~拾捌~CRY
「隊長…?」
怒りで霊圧探査を怠っていたそれに気づけなかった
「更木剣八、涅マユリ、卯ノ花烈に朽木白哉…皆君の元仲間だろ?」
その言葉に私は思い切り突き飛ばし藍染から離れた
「交渉決裂よ…私は取引で此処に来た…
貴方がそれを守らないなら私は此処から出ていく」
そう言って扉に向かい走り出した
織姫を助けなければ…
扉に手をかけたその時、
「...何処へ行く」
藍染の低い声が聞こえたかと思うと、部屋が一瞬で暗くなる
「なっ…」
暗闇の中、視覚、聴覚までも奪われていく
まさか…東仙の―――
そう思った直後、一気に視界が開け、首筋に痛みが走った
その痛みの原因を辿ると、
「………ギ…ン…!?」
ギンが注射器のようなもので私の首を刺していて
途端に視界が歪み私は地面に崩れ落ちた
(な、なんなの…体に力が入らない...)
「神経を麻痺させるだけだ、といってもザエルアポロの作ったものだから強力だがね」
いつの間に近付いたのか藍染は私を抱きおこした
「お前は私のものだ。勝手に行かせない」
私は抑揚のない瞳で藍染を見やる
「諦めなさい。仲間が君を助けようと無謀にも虚圏に乗り込み、一人ずつ倒れていくのを手に取るように感じていたはずだ。もう不可能だと君自身も解っているだろう
...死神達に勝ち目は無い。全ての希望は君達の手には無い」
サラの瞳が揺れる
「護廷十三隊の素晴らしきは、十三人の隊長全てが主要戦力たり得る力を有しているという事だ。それが欠けた今、それも容易い
我々は空座町を滅し去り 王鍵を創生し 尺魂界を攻め落とす」
藍染は動けないサラの唇にキスを落とすと頬を撫でた
「笑いなさい太陽が陰ると皆が哀しむだろう」
そこでサラの意識は途絶えた
藍染はサラを抱えると、長い廊下を歩いていく
その突き当たりには現世への、空座町へ通ずる黒控が開かれていて、十刃が藍染を待ち望んでいた
「スターク バラガン ハリベル 来るんだ」
スタークは一瞬、サラに目を向けるが、すぐに瞼を伏せ藍染の後を付いていった