第38章 ~拾捌~CRY
「ボクがこない丁寧に誰かを抱くやなんて…滅多にないんやけどな…」
腰を抱き寄せる大きな手が背中をはい上がって首筋を辿り、優しく後頭部を支える。まるで愛し合っている男女のような仕草で髪を梳かれて、心臓がギュッと締め付けられる
しがみついたギンの胸元に唇を寄せて、肌にわずかな跡を残す。彼はその行為を止めようとはしなかった。
「…なんや…甘えたさんやなぁ...大丈夫や」
きゅっと痙攣した奥であたたかい彼自身が脈打っている
濡れた肌に感じる微かな息遣い
粘膜が拾いあげるカタチ、熱、感触
繋がっている
繋がっている、その事実が真実味を持って心に染み込んでくる
「ギンッ…はあ…っ…ん」
「サラちゃんとボク、繋がってんのわかる?」
「っうん………うんっ!!」
啜り泣くような声がでて、片手で口を覆う
手を取って首に回してくれる指は相変わらず泣きたくなるほど優しい。その間も優しく続く律動に、泣きそうな声がもれる
「………ゴメンな」
「っ…………」
声を出せば嬌声になりそうで、返事の代わりに背中に爪を立てる。快楽を追いかけて短く浅い呼吸を漏らす彼は何故謝るのか
いちいち私の反応を確かめるように表情を覗き込む彼は何を思っているのか
訊きたいのに訊けない
声にならない問いを塞ぐように、自ら唇を重ねる。啄んでは離し、角度を変えてはまた啄む。、互いの与える快感に集中した
「ゴメンな…ゴメン…」
腰の動きに比例して白んでいく意識のなか、細めた眼でギンを見つめる。何度も謝るギンを必死で手繰りよせ、私は意識を失った
それ以来、ギンと会うことは無くなった
避けられているのか、私がそうしているのか…
もう誰にも解らない真実をただただ信じるしかなかった