第38章 ~拾捌~CRY
「こっちに来てからこんな顔ばっかしてるなぁ?笑ったほうがええ、サラちゃんは笑った顔の方が似合ってるよ」
「ギン…」
「ま、でも普通の子は笑えへんやろなぁ…」
普通…
「ギンは…」
「ん?」
「ギンはどうして笑っているの?」
「簡単なことやから」
「ぇ?」
「簡単やん。顔の口の端の筋肉上げるくらいなんでもない」
それってーー
ギンも笑っていないということなんじゃ…
「っ………」
ギンの真意が汲み取れない
私は息を詰まらせる
本当のことを答えてもらえるとは思っていない
だけど…
「ボクが何を考えてるのか、解らんやろ?」
「………?」
「ボク、人の顔色窺うの得意やねん。キミらが何を考えてるか。不思議やなぁ、ボクはこないにキミらの考えてる事が解るのに、キミらはボクが何考えてるか解らへん」
「そんな…」
そんなことない
そう言いたいのに言葉が出ない
何が違って何が正しいのか、私にも判らなくなっているのも事実だから
「なんか…頭の中ぐちゃぐちゃ…」
私は掌で顔を覆った
「それでええ。ボクを理解出来るんは誰もおらへんから」
「そうじゃない…」
「んー?」
「そうじゃないの…ギンは…自分が誰にも理解されないという事を逆に自分の存在意義にしてる気がする…」
その言葉にギンは貼り付けていた笑みを少し緩める
「じゃあギンは、貴方のことを理解しようとしたら……ギンはいなくなるの?」
「......」
「少しでも理解したいって思うのは…ギンにとって迷惑なの?」
「………今までにもそういう人も居ったけど、皆失敗や。もう諦め。今までもそうやったやろ」
「………これからもあの人に従うの?」
「………」
「私は…私には今でもギンが本当の悪に思えない。何か訳があるんじゃないの?私の事が解るなら…答えてよ………」
言葉じりが消え入りそうになる
私はギンの答えを待つ
だがその問いに返って来た答えは、少しの希望を消してしまった