第36章 ~拾漆~SHAKY
廊下に出た私はグリムジョーの背中を追うように後ろを歩いていると、急にグリムジョーが立ち止まった
「おい…テメーも治しやがれ」
グリムジョーが私の手を掴むと、手の平から血が滲んでいる
叩きつけられた時かな…
ぼんやりと傷を見つめていると痺れを切らしたグリムジョーが私の手を引いた
そして消毒するように私の手の平を舐め出した
「グリム...ジョー!?」
ピチャピチャと音を立て舐めとる仕草に私は動けなくなる
時折、グリムジョーの尖った犬歯の様な歯が当たり、私はピクッと手を震わせた
その振動にグリムジョーはハッとし、自分の行動に驚く様に口元を押さえると再び歩き出した
「ぁ……ありがとう」
サラは慌ててグリムジョーを追いかける
お礼を言われたグリムジョーは少し怪訝そうな顔をすると歩きながら口を開く
「…おい…サラはオレが…」
「…なぁに?」
「……なんでもねぇ」
それ以降話さなくなったグリムジョーに私は隣に並んで歩き出した
「怖くない…それに怒ってないわ」
グリムジョーは言わんとした事に気付いたサラに目を丸くする
「確かに乱暴な所もあるけど私には優しいから…優しい人は怒れない」
「…そうかよ」
グリムジョーは内心、気持ちが軽くなると同時に胸が締め付けられた
自分を否定しないサラの優しさを嬉しく思う反面、どう足掻いても自分のモノに出来ない歯痒さに苛立ち足を止める
「グリムジョー?」
コイツは…オレのコトなんとも思っちゃいねぇ――
「…オレは自分が恐ぇよ」
一瞬切なそうな顔を見せるも、次の瞬間にはグリムジョーは今までで一番冷たい瞳に変わり、歩き出した
「さっさと付いてこい。テメーにやってもらうコトがある」
「グリムジョー…」
サラはグリムジョーのピリピリと気を張った状態に、再び後ろを歩き出した