第35章 ~拾陸半々~INVADE3
「――…よく来たね。待っていたよ、グリムジョー」
開け放たれた扉越しに視線を交わらせた
グリムジョーは何も言わず、玉座の間へと足を踏み入れる
「さて…今日は何故君を呼び出したのか理由がわかるか?」
「…いいえ」
嘘だ
当然頭の中に心当たりはあった
恐らくウルキオラから忠告された事だろうと内心思う
サラに構うなとでも言うつもりなのだろうか?
だが今更それを咎められた所で、自分がサラから手を引くという事は到底考えられない
しかしだからと言って表立って藍染に逆らうという行為は自分にとって懸命ではない事もよくよく理解していた
「今日呼び出したのは他でもなく君の行動についての事だ」
一見爽やかとも取れるような微笑みを浮かべながら藍染は言葉を続ける
「君は、随分先走ってしまう事が多いと聞いた…それは自覚しているかい?」
「........」
体中に緊張の糸が張り詰め、心臓がドクリと脈打つ
不安、畏怖、憎しみといった感情が入り交じり、胸に吐き気と似た感覚が押し寄せてくる
「反逆する虚達を消してくれるのはありがたいんだがね、統括官である要の命令を無視されるのは些か困るんだ」
額に垂れた前髪をしなやかな指で掻き上げ、 分かるかい? と藍染はその底知れない冷徹な瞳にグリムジョーの瞳を映した
「理解したならもう下がってくれて構わないよ」
予想に反し、サラとは全く関係のない内容を咎められた事にグリムジョーは眉を顰めて藍染の顔を見た
「どうした?何か言いたい事でもあるのかな?」
藍染は相変わらず涼しげな笑みを浮かべながら問う
「…いえ、失礼します」
踵を返し背を向け、扉へと向おうとした
すると藍染の声が背中に降りかかった
その瞬間、グリムジョーは嫌なモノが拭えなかった