第35章 ~拾陸半々~INVADE3
「…ドコかにぶつけたみたいね」
「誰にやられた」
「…どうして?」
「オレが聴いてんだ…テメーは質問にだけ答えろ」
「……誰でもないわ」
私は手を離そうとグリムジョーに向き直った瞬間、
握られた手は彼の口許に近づきそのまま口付けられる
驚いた私は硬直し自身の手の甲に触れたままの唇の感覚に顔に熱が集まるのを感じる
「グ…グリムジョー?」
彼らしからぬ行動にグリムジョーから目を逸らす事が出来ない。するとグリムジョーは私の手に口付けたまま、ふっと視線を向けた
目が合った瞬間、私は怪我の痛みからくる目眩で崩れ落ちそうになった
身体から力が抜け自分を支える事が出来ない。クラクラと回る視界に限界を越えた時、グリムジョーが抱き止めた
「ごめ…なさ…」
それでも何とか自分で立とうとすると、ふわりと優しく抱きしめられる
「立ってんの辛ぇんだろーが」
彼の香りに包まれた私は頭の奥が痺れるような感覚の中、目の前にあった彼の服を力無く握り締める
「グリム…ジョー…」
静寂に包まれていた廊下の奥から霊圧が近づく
ハッと我に返った私はまだ痺れの残る頭を軽く振り離れようとする
「も…平気だから…」
だがグリムジョーは私を抱いたまま離そうとせず、むしろ抱き締める力は強さを増した
「ね…離して」
「…何でオレがテメーの願いを聴かなきゃなんねーんだよ」
サラは息苦しさの中、懇願するような視線をグリムジョーに向ける
その瞬間、グリムジョーは自分の心臓がドクリとなるのに気付く
自分の全身に動物の様な体毛があったなら、それは全て逆毛だって血液も一緒に逆流させていただろう
やっぱりだ
コイツと関わると自分で自分の行動が抑えられなくなる
廊下の霊圧が遠ざかっていくのを感じた頃、漸くサラの躰を離す
そして黙ったまま部屋を出ていく
「あ…ありがとう」
扉が閉まる直前に聴こえた声
グリムジョーは歩きながらさっきの強く抱けば壊れてしまいそうな躰を思い出していた