第34章 ~拾陸半~INVADE2
俺の眼は特殊だ
そういう風に作られた
この眼に映るのは隠しようもない事実だ
存在するもの全てがこの眼には映る
眼に見えぬものは存在せぬもの
この眼に映るものだけがすべてなのだ
だが
この俺の眼で映らぬもので存在するというものがあるのだと言う
ヒトならば恐らく誰しも”在る”というものだ
心
俺の眼に見えぬもの
そして人間すらそれを目にすることは出来まい
だが在るのだという
それがさも当然であるというように
眼に出来ぬのに存在することが当然だと?
馬鹿げているとは思わないか
有るというのなら俺に見せてみる事だ
だがそれは不可能だ だが”在る”と断言する
頑なに意固地に
あの女もその心とやらを信じていた
死を目の前にしているというのに心が仲間と供にあるといって恐怖を感じないのだという
心が仲間と供にあるだと?
俺はお前をずっとこの眼で見てきた
お前の中から何か物体が移動した形跡は無い それは確かだ
だがお前は心は仲間と供にあると言いさもお前の中からはもう移ってしまったかのように言う
静かな眼で俺を見ながらもう何も怖くないとでも言うように 静かな眼でこの俺を見る
気丈な女だと言う事は知っていた
死を前にしてこの俺と静かに対峙している
それをさせているのがその心というものなのか?
その心とやらが 恐怖を捨てさせ この女にさらなる強さを与えているというのか?
心とは何だ
この期に及んで この女にこれほどの力を与える心とは
何故お前達は目に見えぬものを信じそして強くなれる?
サラ、俺に視せてみろ
心とやらを
それほどまでに言うのならこの俺に示してみろ
心とやらは何処にある?
お前の身の内に秘めているのか?
ではその胸を引き裂けばその中に視えるのか?その頭蓋を砕けばその中に視えるのか?
俺は以前感じた自分への嫌悪感の正体を知るべくサラに口付けた
だが解らなかった
解ったのは温かさ
そして何も感じない筈の俺が何かを感じたという事だ
証明しろサラ
お前の心の存在を
そうすれば 認めてやろう
心とやらの存在を
この俺には無い存在を